分譲地に紛れ込んだ「欠陥分譲地」

中古住宅の売買市場はより活況だ。筆者が東京から移り住んだ千葉県八街市やその周辺は、数年前と異なり、築30年未満の中古住宅が200~300万円で常に売りに出されているという市場ではなくなった。

所有者がその価格に納得できるかどうかを別とすれば、少なくとも現在の千葉県内の場合、よほど朽ち果てている廃屋でもない限り、引き取り手が現れず手放すこともできない空き家はまずないのではないだろうか。

以前、個人売買サイトとして知られる「ジモティー」に、千葉県九十九里町の半焼家屋が1円で売りに出されていたことがあった。引き取り手が現れたのか、今はその広告もすでになくなっている。

空き家が活用されることはもちろん結構なことだ。しかし忘れてはならないのは、「限界分譲地」は、開発の時点で、実需をあまり想定していなかった投機目的の分譲地という点だ。

単に立地条件だけでなく、宅地造成そのものも、実際に居住することを想定していなかったものが少なくない。ありていに言えば、「欠陥造成地」と断じざるを得ないような分譲地を頻繁に見かけるのである。

傾いたまま放置された2棟の空き家

特に強い印象を受ける光景が地盤沈下である。

地盤沈下は、基本的に軟弱地盤の低湿地などで発生しやすいもので、その分譲地の利便性と直接関連して発生する現象ではないが、ひな壇造成地の盛り土や、手抜きの造成工事(地中の根などを除却しないまま造成し、のちに根が腐って陥没する)などでも発生しやすいことはよく知られている。

茨城県鉾田市にある海沿いの分譲地に、ひどく傾いたまま放置された2棟の空き家がある。地元関係者によれば、東日本大震災の影響で地表がひどく波打ち、以降はそのまま放置されているとのことである。

筆者撮影
震災の影響による地盤沈下によってひどく傾いた家屋。手前の空き地も波打っているのがわかる。(茨城県鉾田市上幡木)

家屋は90年代ごろに建てられた比較的新しいものだが、周辺の擁壁には1970年代以前の分譲地において主流だった大谷石が使われており、造成時期は家屋の建築年より古いものであることが推察される。

先の震災で茨城県は、最大震度6弱の強い揺れに見舞われ、北浦に架かる鹿行大橋が崩落する被害も発生した。当然ダメージを受けた家屋も少なくないのだが、しかし分譲地もろともこれほどまで地形が変化してしまった事例は同市内では他にない。

この被災家屋の近隣ですら震災による特段の影響は見られないので、これはもう造成工事の質の低さに起因する被害であると断じるほかないだろう。