「県職員→副知事」は天下りには当たらない
川勝知事の言う「取り扱い」とは何か。
かつて国家公務員は現役を終えた後、「わたり」と称して何年かごとに複数の関係団体へ「天下り」して、多額の退職金を受け取ることが横行していた。その批判から、国は2009年に地方団体への再就職に退職金の辞退を要請した。この要請を受けて、静岡県も同様に全国の自治体で同じような取り扱いをしているというのだ。
しかし、各都道府県を見ても、静岡県のように副知事の退職金に同じ要請をしている自治体はない。自らの意思による副知事の退職金辞退の事例もない。
つまり、副知事に就くことは「県の出資する団体に再就職する」ことには当たらないのだ。
また、2014年12県議会で大須賀氏は、退職金辞退の理由に県の要請という説明をしなかった。
大須賀氏の後、2015年8月から2019年7月まで土屋優行氏、2016年4月から2020年4月まで吉林章仁氏が副知事を務めている。
県OBの土屋、吉林の両氏ともに退職金約2000万円を辞退した。
「副知事個人の判断」で退職金の辞退などできない
今回の知事の答弁通りであれば、県職員出身である、現在の出野勉、森貴志の両副知事は退職金を辞退しなければならない。
退職金を辞退した過去の副知事は「県の出資する団体に再就職した場合には、退職金を支給しない要請」に従ったからである。つまり、県の要請というのであれば、出野、森の両氏も退職金を受け取れないことになる。
ふつうに考えれば、県の要職に就く副知事が県の要請に逆らって、自らの意思で判断することなどできるはずもないからだ。
しかし、9月県議会で、川勝知事は「それぞれの副知事が自らの意思で判断された。今後も副知事の判断を尊重する」などと何度も述べた。
副知事が退職金を辞退したのは、指名した川勝知事が辞退させる圧力を掛けたか、あるいは辞退せざるを得ない忖度を誘導した疑いをぬぐえない。
9月県議会の答弁で、川勝知事は「そのようなことは全くない。当時の副知事が自らの意思で判断したものと認識している」などと否定した。
果たして、川勝知事の言うように、副知事が自らの意思で判断したのか?