目標としたら、がむしゃら 怒りをパワーにするタイプ

撮影/武藤奈緒美
京都・鴨川近くの「かもがわカフェ」には修業時代から通っている。「うちのお客さんは、みんな応援してますよ」と、オーナーの高山大輔(写真手前)。二葉は「大ちゃん」と呼ぶ

この人はすごい噺家(はなしか)になる。そう感じ、初めてインタビュー記事を載せたのが16年8月。19年4月からは「勝手に大阪弁案内」という二葉の連載を始めた。2回目に二葉が書いたのは「いちびり」。はしゃいだりふざけたりを堂々とできるけど愛嬌がある、アホな子どものことだ。

師匠の米二はなぜかアフロヘアで落語会に通ってくる二葉をおもしろいと思い、着物の着方も二葉に任せた。「彼女のアホは、ええアホやと思います。ほんまにいたら難儀やけど、見ててにこやかになれる。アホもいろいろいますから、極めていきたいんでしょうね」

米二が語る修業時代の二葉は、健気(けなげ)で可愛い。いわく、初めて稽古をつけたら何もわかっていなくて驚いた、あれだけ自分の落語会に来ていたのに、上手(かみて)も下手(しもて)も知らなかった、目の前の自分を真似(まね)るので左右が逆になるから、並んで稽古をすることにした、台詞(せりふ)覚えもすごく悪い、ところが覚えると、これがなんとなく落語になっている。

「なんとも言えないおかしみを感じました。我々の方ではそれを、フラがあるっていいますが」

1年ほどしたら、稽古中に泣くようになった、想定外だったが、それで女は面倒だとは思わなかった、悔しいからだとわかったし、泣きやんでもまた泣くから、稽古は「もう今日あかんな、今日やめとこな」と……温かい語り口が心に響く。

米二がほめるのが、二葉の根性だ。上方落語協会主催の「上方落語若手噺家グランプリ」、「上燗屋(じょうかんや)」で初めて決勝に残った18年、「どこがあきませんでしたか」とすぐに聞きに来た。

「目標としたら、がむしゃらにくらいつく。3人いてる弟子の中で、根性は一番です」

前出の山田も「若手噺家グランプリ」の二葉を覚えている。準優勝した21年、出場者全員が並ぶ結果発表でのことだ。舞台上の二葉はひとり、憮然(ぶぜん)とした表情で立っていた。気楽に話せるようになっていたので、客前であんな土気(つちけ)色の顔はどうだろうと言ってみた。「負けた時にニコニコできひん」と返ってきた。