「ビジョンを話して」

「『やる前にビジョンを話して』と言われました。学費は自分で出しなさいという話だったので、時給いくらのところでアルバイトを週何回して、学費を貯めるためにこれぐらい働きますというプランを、親が納得するまでプレゼンさせられました」

『プレジデントFamily2023秋号』(プレジデント社)

無事学費を貯め、NSCを卒業し晴れて2013年に芸人デビュー。その活動の最中に始めたのが、今につながる「無駄づくり」だったという。

「吉本がYouTubeの企画を公募したときに『生活に無駄なものを作って配信したら面白いんじゃないか』と企画を出したら通って。不器用だからと挫折したものづくりを『これでまたできる』と思いました。無駄づくりという言葉もそのとき生まれたものです」

無駄づくりは思った通りにできなくても面白ければOK。失敗のないものづくりなので、気軽に自己表現しやすい点が魅力だという。

YouTubeは周囲からの反応も好評で、徐々に再生数が伸びていった。今では100万回を超える動画もあるほどだ。その後藤原さんは、より制限なく無駄づくりの活動を続けるために吉本興業を退社。22年2月に株式会社無駄を設立、アトリエ兼事務所を構えて今に至る。

YouTubeチャンネル「無駄づくり/MUDAzukuri」より

月に1度届くファンレター

今では映画への出演や、文芸誌『文學界』での連載(「余計なことで忙しい」)など、国内外問わず活動の幅を広げている藤原さん。SNSのフォロワーは30万人を超え、JCI JAPAN TOYP(青年版国民栄誉賞)2022などの有名な賞を数々受賞するほか、Forbes Japanが選ぶ世界を変える30歳未満の30人(30 UNDER30 2021)にも選出された。しかし藤原さんは、ここで自分にくぎを刺す。

「賞はうれしいですが、今もできるだけ“評価される・されない”といったことは気にしないようにしています。好きを好きでいつづけるための努力はしていますね」

そんな藤原さんのもとには、今も母から「連載を読んだ」「映画出演なんてすごい!」と、月に1回は褒めLINEが届くという。どれだけ活動の幅が広がろうと一番のファン(親)との関係性は変わらないようだ。