子育て世代がほしいのは独身時代のような自由

「こども・未来保険」の余資は、現金給付ではなく、「負担の軽減」と「心の問題」に使用用途を限定するというのも一案です。広く薄く現金を給付しても、生活費や貯蓄に回ることが多く、有意義な仕組みはできないからです。

そうした直接給付ではなく、「育児は家庭から地域社会全体」で、という方向に向けて、政策を集中すべきと考えます。こうした取り組みでは、地方自治体で良き事例が見受けられます。

好例として挙げると、広島県は、2008年~2012の間に出生率を0.2も上昇させました。取り組みの主旨は、まさに「育児の個人負担を減らし、地域で請け負う」です。

たとえば、ファミリー・サポート・センターという子どもの一時預かり施設を運営し、子どもを預けたい人、子どもの世話をしたい人たちが、結びつく仕組みをつくっています。

同様に、イクちゃんマークというものをつくり、地域の店舗に「育児支援」への協力を依頼しています。このイクちゃん認定店には、幼児向けの割引やキッズセットメニュー作りなどの「よくあるサービス」も含まれますが、出色なのは、店舗に子どもの遊ぶスペースを設ける助成もしていることでしょう。

飲食やショッピングなど、子連れではやりづらいし、子育て主婦とてたまには独身のように息抜きもしたいものです。たとえば、熱いラーメンなど子どもを抱えて食べるのは無理でしょう。そんな時、店に子どもの遊ぶスペースがあれば、そこで遊ばせ、両親は開放されます。

ショッピングセンターに保育士を配置

こうした仕組みを拡大して全国展開してみてはどうでしょうか。

大規模ショッピングセンターであれば、遊具施設も大きくし、そこに保育士を配置して、安心して子どもを預けられる仕組みをつくる。その施設設置も、保育士の給与も、運営諸経費も、財政支援する。こんな政策が浸透すると、「出産しても、ショッピングや友達とのお茶会ができる」ことになります。子どもを持てば独身時代のような自由がなくなる……と結婚や出産に後ろ向きな人たちも、考えが変わるはずです。

写真=iStock.com/Peera_Sathawirawong
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そして「子持ちの主婦が遊ぶなんてもってのほか」などと何かとうるさく監視する風潮さえも壊れていくでしょう。

こんな変革を、イクメンをもじり「イク面」「イク圏」などと呼ぶのはどうでしょう。