孫さんからもらった一冊の本とテレホンカード
――柳井さんと孫さんは同年同月(1994年7月)に株式を公開しています。おふたりが出会ったのはいつだったのですか?
孫 確か私が柳井さんに会いに……。
柳井 いえいえ、僕が会いに行ったんです。
孫 そうですか。そうかなあ。いや、私はイトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんから柳井さんのことを聞いていました。
「ユニクロというすごい会社がある。柳井という男は絶対に伸びるから会ったほうがいい」
これはぜひ、会いに行かなければ、と……。
柳井 ところが、行動を起こしたのは僕のほうが早かった(笑)。
僕はあの頃、『コンピュータ帝国の興亡』(ロバート・X.クリンジリー著)というIT業界のことを取り上げた本を読んでいて、それで孫さんのビジネスに興味を持ったのです。孫さんはPC―LANを入れて、日次決算をやっているという。おそらく日本で初めてのことですよ。まだEメールが一般化する以前でしたし、ウィンドウズ95が出る前のこと。僕なんかパソコンも触ったことがなかったくらい。よし、ユニクロにも同じシステムを導入しようと思ってソフトバンクを訪ねたのです。孫さんは会ったときから商売の話よりも志を語っていました。それが印象に残っています。その後、うちはひとり一台パソコンを入れてPC―LANも導入しました。