蒸気機関から内燃機関、そして電気へ

――EVに参入した自動車メーカーは、電池のコストが原因で利益を損なうかもしれません。EVの価格をエンジン車よりも高くする考えはありますか。

現在ボルボが製造している車は、エンジン車でもHVもEVでも、同じ価格にしています。25年までにコストのベースは同じになるようにします。

100年前、駆動システムは蒸気機関でした。その後内燃機関が出てきて、エンジン車ができました。内燃機関と比較すると、蒸気機関は非常に効率が悪かった。人々はすぐに内燃機関に移行しました。当然、内燃機関のシステムでも様々な素材や構造などで大幅な改善が行われてきました。そして、次世代のシステムが電気なのです。

私たちはある技術から違う技術へと移行する重大な転換のさなかにいます。確かに現時点では、電気駆動システムのコストは高いかもしれません。それはまだ世界の車の5%にしか使われていないからです。より多く活用されて大量生産され改善も進めば、EVのコストは下がります。エンジン車を買う人が減り、エンジン車のコストは上がります。

ノートパソコンも「電池が持たない」を解決した

IT業界出身の私の経験をもう少しお話ししましょう。最初にノートパソコンが世に出た時は、大変高価なものでした。当時は、持ち歩けるパソコンがどうしても必要な人のみを対象とした製品でした。

大西孝弘『なぜ世界はEVを選ぶのか 最強トヨタへの警鐘』(日経BP)

それが、今では誰もがノートパソコンを持っていますね。デスクトップパソコンを見かけることがめっきり少なくなりました。初期のノートパソコンには「電池が持たないから電源につないだまま使わなくてはならない」という不満の声がありましたが、それも技術開発が進み、充電せずに1~2日使えるようになった。摩擦因子がなくなったわけです。

車も同じです。EVの普及における摩擦因子は、ノートパソコンの時と同じように少しずつ解決に向かっています。それらの問題が解決されれば、誰もがEVを使うようになります。

そもそも考えてみてください。今から6年後の29年に、古い技術(エンジン車)に数万ドルも払いますか? どうせなら最新の技術を搭載したものを買いたいと思いますよね。その方が将来売るときの残存価値も大幅に高くなるはずです。

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