岸田首相は内閣改造後の記者会見で外相交代の意図を聞かれ、「外交は外相や防衛相ら閣僚も大きな役割を果たすが、首脳外交が大変大きなウエートを占める。私自身、首脳外交で大きな役割をこれからも果たしていく」と語気を強めた。外交を主導するのは自分一人で十分という宣言だ。軽量級の上川氏を起用したのも、外務官僚の忠誠心を自らに引き寄せ、岸田首相による「外交独占」を進める狙いがあるのは間違いない。
支持率低迷でも、自信満々でいられるワケ
米国追従を強める岸田首相の「外交独占」は、バイデン政権の意向にぴったり重なる。内閣支持率が低迷し、自民党内に不満が広がっても、岸田首相が政権継続へ自信を深めているのは、バイデン政権に支えられていると確証しているからにほかならない。
裏を返せば、岸田政権の最大のアキレス腱は、バイデン政権といっていい。バイデン大統領はカメラの前でつまずいたり、物忘れをしたりして、高齢不安が指摘され、来年の大統領選でトランプ前大統領に勝てるのか疑問視する声が広がる。バイデン政権という後ろ盾を失えば、岸田政権は瞬く間に失速するに違いない。
来年は9月に自民党総裁選、11月に米大統領選がある日米同時政局の年だ。岸田政権の命運はバイデン政権の行方にかかっている。総裁選前にバイデン再選に黄信号がともれば、岸田首相も不出馬に追い込まれる可能性が高まる。
この時、茂木氏が手を挙げるのか、河野氏が人気を回復して挑むのか、それとも菅氏や二階氏が今回の人事でも干された石破茂元幹事長らを担ぐのか、さらには最大派閥の安倍派が誰を推すかをめぐって分裂するのではないか……。日本政界には有力なポスト岸田が見当たらず、来年は大乱世の予感である。