ムダな予算を削れば、財源は生み出せる

明石市が実施した、「所得制限なし」の5つの無料化施策は明石市民のみならず、日本全国の大勢の方から評価と賛同を得ましたが、それを見て、このような子育て政策は、高齢者施策にしわ寄せがいくのではないか、限られた財源しかない自治体はマネをしたくても容易にできないのではないか、単純にそう捉える方も一方で少なくありません。

しかし、高齢者にメリットがない、新しい財源がなければ積極的な子育て支援施策などできないというのは、はっきりいって間違った思い込みです。お金がないという点に関しては、予算にはムダな部分がたくさんありますから、それを何割かでも削ってまわしてくれば十分可能なのです。

明石市の子ども関連予算は私が市長になる2010年度は125億円でしたが、2021年度は297億円と、10年で約2.38倍増加しました。この増加分には、「所得制限なし」の「5つの無料化」にかかる費用、約34億円も含まれます。

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日本の少子化対策は待ったなし

たとえば、この「5つの無料化」を、明石市全体のスケールで見るとどうなるか。明石市が年間に使えるお金はざっと2000億円です。「5つの無料化」にかかる施策費の約34億円は2000億円に対して、たった1.7パーセントの比率です。1.7パーセントというのは、年収600万円(月収ベースで50万円)の家庭に置き換えると、月々、家計から子どものお稽古に8500円捻出するようなものです。

つまり、「5つの無料化」にかかる予算というのは、その程度にすぎない。たくさんあるムダな予算をちょっと削るだけで浮く金額です。これだけを見ても、財源がしっかりなければ子育て関連施策の無料化などできないという発想は、誤った思い込みでしかないとわかります。

政府は異次元の少子化対策を打ち出しましたが、少子化の加速ぶりを見ると、かなり危機的な状況にあります。私が小学生のころ、日本の出生数は200万人程度だったのが、その後、減少を続け、2022年は約77万人、出生率は1.26まで落ち込んでいます。これ以上の減少を避けるには、早急に思い切った策を講じる必要があります。