解決策②「トップの器をこそ、磨く」

だが、堅牢なるミドルマネジメント組織を構築するというアプローチが、すべての企業に適用すべきものではないことも、ここで付記しておきたい。国内を見渡せば、大半の企業にとっては、社長が変わってもびくともしない堅牢な組織を作ることは、至難の業だろう。

繰り返して言うが、それは決して「残念なこと」ではない。確かにそれは「会社のガバナンスの弱さ」ではある。だから、なるべく堅牢なマネジメント組織を作ることは、長期目線では大切である。

だが、社長に人格を求め、その人格の下に経営が成されていくこと自体に、何か問題があるだろうか。人格上の問題を抱えたトップが、堅牢なマネジメント組織に支えられて動く企業と、人格に秀でたトップが、まだまだ脆弱ぜいじゃくなマネジメント組織を補って動く企業の、どちらが問題であるかといえば、一概に結論は出ないだろう。

事業承継は、実は問題自体の構造はシンプルなのである。つまるところ、承継者が経営者の器を備えていればよい。それだけのことだ。

同族であるか、そうでないか。新卒であるか、中途採用か。文系職か理系職か。大卒か高卒か。ミドル世代かシニア世代か。いずれの分類も、ナンセンスである。その会社のメンバーや、社外のステークホルダーが、社長のことを、「彼・彼女こそが、この会社を率いるべき、社長の器である」と認めるか否か。もっと平易に「この人についていきたいか」と言い換えてもよい。

経営学の父・ドラッカーが示した「トップの役割」

経営者の器とは、何なのか。実は、経営学では長年それを研究の対象としてきている。経営学の父・ドラッカーは、トップマネジメントの役割をかく述べている。

・組織の目的を明確にすること。組織の方針を決定すること。
・内部のメンバーにとっての、信頼できるリーダーであること。
・利害対立について、調停を行える人であること。
・組織の内外において、当該組織の代表者、象徴的存在であること。

なるほど確かに、これらを成せることが、経営者の「器」だと、皆さんも納得できるのではないだろうか。

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