東山新社長に「知っていた」と認めてほしかった

でも、会見では東山新社長は「(ジャニー喜多川の性加害を)知りませんでした。噂で聞いたことしかない」で通していた。こっちとしては苦笑いするしかないよね。「さすが役者だな」と……。

撮影=プレジデントオンライン編集部
ジャニーズ事務所の記者会見を生中継で見守る「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の平本淳也代表ら=9月7日、東京都千代田区
日本記者クラブで記者会見する「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の平本淳也代表(中央)ら=9月7日、東京都千代田区(撮影=プレジデントオンライン編集部)

第三者から見ればイメージの良い、みごとな演技をしていた。おそらく彼は、スターである自分が会見に出て「謝罪させていただきます。真摯しんしに向き合っていきます」と言えば、みんなが納得してくれると踏んでいたんだろう。最初の30分は完璧だったよね。でも、質疑応答に入って、記者やジャーナリストから何度も質問されているうちにボロが出ちゃった。自分の性加害についても突っ込まれて「したかもしれないし、していないかも」と言っていたからね。そこで否認しないだけ、えらいとも思ったけれど。

むしろ東山新社長が「ジャニーさんが性加害しているのは知っていた」ということだけでも正直に言ってくれたら拍手喝采したのに。他にも言えないことはあるだろうけれど、この際、膿は出し切ったほうがスッキリしたと思うよ。

だから、私が見るに、会見のシナリオを書いた人は東山新社長とジュリーさんに「『知らなかった』で押し通しましょう」と嘘をつかせたわけ。たしかに「知らない」で逃げられたらいいし、「知らない」というスタンスは最強だよね。でも、質疑応答に入ると、これまで長年、封じ込められていたメディアの不満が一気に爆発して、忖度そんたくなしの質問が殺到し、そのシナリオが崩れちゃった。

ジャニーズが初めて忖度なしの会見に挑み、白旗を揚げた

そもそもジャニーズ事務所が社長の出る会見をやったこと自体が、芸能史上初めてだから、ジュリーさんたちは、会見を開いてあげるぐらいの気持ちだったんじゃないか。東山新社長にしたってこれまでドラマや映画の制作発表会見ぐらいしかやったことないし、お抱え記者しか相手にしたことがないわけだから、まさかあんなに叩かれるとは思わないよね。

「白旗を揚げたジャニーズ事務所をこれ以上叩くことはできない」と語る。(撮影=阿部岳人)

私には、東山新社長もジュリー前社長も「性加害はありました。ごめんなさい!」と降参しているように見えた。現段階でそれ以上、叩くというのは、ちょっと人間としてできない。

被害者の立場、そして他の被害者をサポートする立場としては、2人がそろって「対話する」「補償する」と言ってくれたのには安心したし、顔も知らない外部の経営者がやってきてトップに立つよりは、知っている人間が対応してくれたほうがやりやすいよ。