いちばん安くて、いちばん早い方法を探す日々

私がやっていた内航船は物流が多くて船が足りなかった。船をアレンジするだけで大変だったんです。三菱商事さん、三井物産さんはパートナーの船会社がいるから、用船も手間はかからない。伊藤忠は化学品用タンカーのオペレーションをやっている船会社に依頼をして、積み地(出発港)と揚げ地(到着港)の各担当者と連絡を取り合いスケジュールを調整しなくてはならなかった。

夕方の5時までに船名を連絡しなきゃいけない。連絡すると、現地担当者は「危険物の船積みです」と海上保安庁に船名を登録する。まあ、複雑な手続きのいる受け渡しだった。とにかく船積みと航海の時間をきっちり把握して、メーカーさんに連絡しないと、彼らは困るわけです。もし船積みが遅れて、港への到着が遅れると、最悪の場合、プラントが止まってしまう。これはもう大失敗ですから、プラントを止めていたら、私はこの場にはいません。

撮影=門間新弥

船が見つからなかったり、船積みが遅れたりしたことは何度もありました。失敗です。日本近海をそれぞれの会社の船がバラバラで動いているから、「今、おたくの船はどこにいるんですか?」と聞いて、把握しなきゃいけない。荷揚げ後の空になった船を捕まえて、次の積み地へ走ってもらう。近くにいた船なら運賃が安く済むけれど、なければ遠くから来てもらわなきゃいけない。そうなると運賃が高くなる。これも失敗です。

新橋の赤ちょうちんで情報収集に励む

先輩が取ってきた仕事に採算外のコストが発生するわけですから。自分の失敗で先輩に迷惑をかけたのがほんとにつらかった。なんとかしなきゃいけないと必死になって挽回策を考えました。最初の頃は慣れてないから、用船手配が下手くそでしたね。

ある船会社に邪魔されて、船をうまく手配できなかったこともありました。これじゃいかんと自分なりに考えたのは、情報のネットワークを作ること。それにはまず、自分を覚えてもらわなくてはならない。「伊藤忠で配船してるのは石井だ」と認めてもらわないと、仕事にならない。

そこで、船会社のおっかない先輩たちをお誘いして、新橋の烏森口にある赤ちょうちんへ連れて行くわけです。

「よろしくお願いします。うちは、こういう航路に商品を週に何回は運んでます」と話をして、酒を飲む。飲みながら船の情報を聞く。そうしているうちに船の業界の人たちと親しくなり、業界で知られるようになりました。

「伊藤忠は石井だ。石井は配船が上手い」と。となると、他の商社の船積み担当がわたしのところに聞きに来るようになるんです。