1日合計8回絶叫マシーンに乗った

当時確か1人8枚まで購入できました。つまり並ばずに1日合計8回も「フジヤマ」だの「ええじゃないか」だの「ド・ドドンパ」といった絶叫マシーンに乗りまくることができます。それで実際に乗りまくりました。それを1回きりでなく数年続けました。つまり私はフジヤマもええじゃないかも、計10回以上は乗っていることになります。

私が1番好きなフジヤマを例にとって、それがどんな体験だったかご紹介しましょう。

フジヤマはシンプルなジェットコースターで、最初は地上79メートルまでゴトゴトとコースターが上がっていって、しばらく止まったあと、落下が始まります。私が数えたところものすごいスピードで13回落下を繰り返す仕組みになっています。

乗らずに外から眺めているだけで、えぐいコースターであることはわかります。乗っている人の悲鳴も響き渡ります。

初めて乗ったときのことは今でも忘れられません。上に登っていくときから怖くて怖くて、美しい富士山を堪能する心の余裕もありません。そして登り切って一瞬の静寂のあと、落ちては登り、落ちては登り、恐怖で悲鳴を上げながらそれに翻弄ほんろうされているうちに終わってしまいました。もう何が何だかわからない恐怖体験でした。

それが2度目に乗り、3度目に乗り……と繰り返しているうちに、不思議と余裕がわいてきます。落下するたびに「1回目~」「2回目~」などと数えられるようになってきました。富士山の美しい姿をそのまま眺めて堪能できます。落ちるときの風を切る感じ、あの何ともいえない内臓がふわっと持ち上がる感じも、そのまま感じられるようになりました。

だんだん怖くなくなってきたので、悲鳴を上げることもなくなりました。逆に楽しくて笑っちゃったりしていました。そう、これがエクスポージャーによる変化というか効果なのです。曝露し続けることによって、反応が軽く、小さくなっていき、余裕が出てきます。最初に感じていた恐怖や不安は、最後にはほとんど出なくなってしまいました。

まるで仏様のようだった

最後にフジヤマに乗ったときのことを、私はよく覚えています。乗るのを待っている間、他のお客さんのグループはみんな高揚し、「こわーい」とか「どうしよう」とか「やばい」とかいっているのに、私たちのグループだけはとても落ち着いており、チーンとしています。

私たちはもう、電車を待っている人たち程度の落ち着きを得てしまったのです。心拍数も全く上がりません。マシーンに乗り込んでも、何とも感じません。本当に電車に乗るような感覚です。ゴトゴトと上がり始めて、だいぶ高いところまで行くと、やはり周囲の人たちは「こわーい」「やばーい」といいながら、みな高揚しています。でも私たちは、先ほどと同様、完全に落ち着いており、チーンとしたままです。まるで仏様のようだな、と思ったことを覚えています。