設備管理、水泳指導や監視は大きな負担
文部科学省のスポーツ庁は、毎年「水泳等の事故防止について(通知)」(2023年4月27日)を教育委員会教育長らに対して出し、水泳に伴う事故を防ぐための手立てを講じることを指導している。特に、プールを利用した水泳においては、授業や部活動、プール開放事業等様々な場合に、排水溝に吸い込まれて溺れる事故や飛び込みスタートに伴う衝突事故などが起こると重大な被害が生じる可能性が高いことから、2007年に文部科学省は国土交通省と連名で「プールの安全標準指針」を発出し、これにのっとったプールの点検・管理や水泳指導・監視や万が一の場合に関する救護体制の確立を呼び掛けている。
2021年度には学校プールにおける死亡事故が1件、障害が残った事故が4件あった(日本スポーツ振興センター「学校等事故事例検索データベース」)。民間・公営のプールでの事故に比べると件数は少なく思えるかもしれないが、この裏にはおよそ300倍のヒヤリ・ハット事案があるともいわれる。こうした深刻な事故を防ぐために、専門性が必ずしも担保されていない教職員が日常的にプールの点検・管理をし、細心の注意を払って水泳指導を行っていることも顧みられる必要があるだろう。
このように見てくると、学校のプールに限らず、水泳授業の実施には多くの負担と問題が付きまとっていることがわかる。そして、水泳授業そもそもの教育的意義を達成することはおよそ簡単ではない。学校のプール、そして水泳は、これから縮小、あるいは部活動と同様に地域移行させていくほかないだろう。