晩婚が出産に及ぼした影響を探る

完結出生数は小幅な減少でしたが、その理由も「結婚後の妊活」が問題なのではなく、そもそも結婚が遅かった、即ち晩婚化が主因となっています。

以下、「晩婚化」が出産数にどのような影響を与えたか、調べる方法となります。少々難しい説明となりますが、お付き合いください。

出生動向調査を見ると、初婚年齢別に、女性が何歳の時点で子どもを産んだか、が記されています。このデータを集計分析すると、結婚後の女性の、年齢別出産数がおおよそ推計できます(離婚・死別があるのでこの分を減じて補正を加え、データを精緻化)。

ここからは、推計手法がわかるように、図表2を併せて見ながら読み進めてください。

同図表では、1974年を基準年とし、この時点の年齢別出産数データをまず作っています。それが、2.05となり、グラフ中には黄色の水平直線として描かれています。

次に、1974年の「結婚後の年齢別出産数」(以下「出産行動」と表記)を全く変えず、初婚率のみを、他の年のデータに入れ替えてみます。そうすると「1974年の出産行動」のままで、初婚年齢だけが変化した場合、どのような(既婚者の)出生数になっていたか、が示されることになります。それが、点線で示した折れ線です。

それとは別に、今度は、各年度のリアルデータを作って実線(+ドット)の折れ線とします。これは、既婚者の合計特殊出生率(≒前述の完結出産数)に極めて近い数字となるでしょう。

浮かび上がる少子化の本当の原因

図表2をよく見てください。一目瞭然ですね。

もし、出生行動が1974年のままだったとしても、昨今のように初婚年齢が上がっていた(=晩婚化)ら、点線の部分まで出生率は下がっていたということです。これはとても大きな低下ですね。

一方、その点線と実線の差は、出産行動の変化による影響を示しています。1974年と現在を比べても、低下幅は小さく、しかも、出生率が史上最低となり少子化が声高に叫ばれるようになった2005年以降は、各種啓蒙けいもうも進んだために、その差はぐんぐん縮んでいます。

ここまでをまとめれば以下のようになります。

結婚した女性は、昔とそんなに変わらず、子どもを産んでいる。
少子化は、結婚しない女性が増えたこと、そして、結婚が遅れたことがその主因だ。