既婚者が産まなくなったのか、結婚しない人が増えたのか
少子化はどのように生じているのでしょうか。
日本では、合計特殊出生率という指標が重用されています。この数値は、当該年に15~49歳の女性が何人の子どもを出産したか、各年齢の平均値を出し、それを足し合わせて算出しています(詳細は後述)。過去から現在まで振り返ってみても、15~49歳での出産が圧倒的多数なので、この推計法は実際の出生状況と相違は少ないでしょう。
ちなみに、後ほど登場する「生涯未婚率」も50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合を示しています。結婚・出産については、50歳という区切りが、日本の公的統計では重要視されているのがわかりますね。
合計特殊出生率の算出法を少し詳しく示しておきます。これは、年齢ごとに一人の女性がどれくらいの子どもを産んだか、の平均値を足し上げたものと言えるでしょう。わかりやすく書くなら、15歳女性の平均出産数が0.01人、16歳女性は0.03人……49歳女性の平均出産数は0.04人、とこうして足していったものです。
少子化の考察にはこの指標が多用されてきました。でも、このデータではわからないことがあります。それは、データに未婚者も既婚者も含まれることに由来します。
そのため、「未婚者が多くて数字が下がっているのか、既婚者の出産が減っているのか」さらにいえば、「初婚年齢が上がっているからなのか」がわかりません。
この点を明らかにするために、岩澤美穂氏の「少子化をもたらした未婚化および夫婦の変化」(高橋重郷・大淵寛編著『人口減少と少子化対策』原書房, pp.49-72.2015)を基に、少子化の詳細状況を説明することにします。
欧米は出産≠結婚、日本は出産=結婚
日本の場合、未婚者の出産はほとんどありません。他の先進国では、未婚で子どもを産むケースが少なくなく、また、代理母や養子などで子どもを授かる事例も多々あります。この点が、まず、日本の問題でもあり、こうした社会的不自由さを取り除くことが、一つの対策として議論されるべきでしょう。この話は、最終章の「解決策」でまた再度、触れることにいたします。
とまれ、未婚≒子どもが持てない、という日本型社会においては、生涯未婚率の上昇が、そのまま少子化の高進につながることになります。1980年代に5%程度だったそれが、現在20%にまで上がってきたのだから、出生数が減少するのもむべなるかな、でしょう。
そう。少子化の第一因は「未婚化」にあるといえそうです。
そのことを表す資料を、簡単なものから見ていきましょう。
まず、既婚者の出産数はそれほど減っていないということを、完結出生数から示してみます。完結出生数とは、結婚後15~19年たった女性の平均出産数なのですが、第2次ベビーブームに当たる1972年はその数字が2.2であり、2015年では1.94です。確かに減ってはいますが、その減少率は12%弱でしかありません。同時期の合計特殊出生率は、32%強(1972年2.14→2015年1.45)も減少しているのと比べると、「結婚した女性」の出生数の減少はかなり小幅だということがわかるでしょう。