内臓脂肪がつきにくくなる機能も

このテストステロンの働きは、メタボリックシンドロームの予防や改善につながります。

メタボリックシンドロームとは、「内臓脂肪型の肥満が原因で、脂質異常や高血糖、高血圧などになっている状態」のことであり、テストステロンが活発に働いていれば、内臓脂肪がつきにくくなるからです。

実際、前立腺がんを患った患者さんに抗男性ホルモン療法を行い、体内のテストステロンを除去したところ、メタボリックシンドロームになったという症例が数多くありますし、メタボリックシンドロームの患者さんの血液を調べると、重症な人ほど、血液中のテストステロンの値が低いという研究事例もあります。

ちなみに、皮下脂肪や内臓脂肪が体にたまり、肥大化すると、

・慢性炎症を引き起こし、がんや糖尿病などの原因ともなる「IL-6」
・血栓を溶けにくくする「PAI-1」
・血糖値を上げる「TNF-α」

といった悪玉ホルモンを分泌し、がんや循環器疾患しっかん、糖尿病などのリスクを高めるともいわれています。

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「幸せホルモン」の分泌を促し、元気な心をつくる

テストステロンは、脳に働きかけ、「心」にも大きな影響を与えます。たとえばテストステロンには、意欲や行動力、競争心を高める作用があります。これは、テストステロンが、脳の中枢神経を刺激し、「ドーパミン」を分泌させるからです。

ドーパミンは、欲求が満たされたり、何らかの挑戦を行ったりしたときに分泌される神経伝達物質で、快感や喜びを増幅させ、やる気を起こさせ、行動力や競争心を高める働きがあります。

一方、ドーパミンには、テストステロンの分泌を高める作用もあります。つまり、テストステロンが十分に分泌されていると、ドーパミンの分泌が促されて意欲や行動力、競争心が高まり、それを受けて活発に行動すると、さらにドーパミンが分泌され、テストステロンの分泌量が増えるという、良い循環が生まれるのです。

ほかにもテストステロンには、「セロトニンの生成に関与している」「アセチルコリンを増やす」という特徴があります。セロトニンとは、必須アミノ酸のトリプトファンを原料として作られる神経伝達物質の一つで、生体リズム、睡眠、体温、神経内分泌の調整などに関与しています。

「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンには、神経を興奮させるノルアドレナリンや、快感や喜びを増幅させるドーパミンの働きを制御し、自律神経のバランスを整える作用があり、感情や気分をコントロールして、精神を安定させます。