硬くなった血管は傷つきやすいため、血栓ができるリスクがどうしても高くなります。血管が血栓によってふさがれると、そこから先に血液が流れなくなり、酸素や栄養分が送られなくなるため、やはり脳梗塞や心筋梗塞などが起こりやすくなってしまいます。
テストステロン不足が引き起こす「認知症」「老人性うつ」
テストステロンの分泌量の低下は、認知症や老人性うつなど、脳、そして心の病気にもつながります。たとえば、みなさんは、「若いころ、バリバリ働いていた男性が、定年退職したのを機に認知症になってしまった」、あるいは「うつ状態になってしまった」というケースを見聞きしたことはありませんか?
テストステロンは「社会性ホルモン」とも呼ばれ、大きな判断を任されるようなポジションにいたり、競争などにさらされていたりすると、分泌量はどんどん増えていきます。
そして、テストステロンが増えれば、その分活発に行動するようになり、成果が上がることで、さらにテストステロンが増すといった良い循環が生まれます。
ところが、仕事一筋で生きてきた人が退職すると、テストステロンの分泌量が急激に減少することがあります。加齢によるテストステロン不足に加え、それまでテストステロンの分泌を促していた「仕事」という生きがいや「会社」という居場所、周りからの承認を失ってしまうからです。
テストステロンの分泌量が低下すると、今度は、意欲や行動力が低下し、次第に体を動かしたり外出したりすることが少なくなり、さらにテストステロンの分泌量が低下するという悪循環が生まれます。
この悪循環にはまり、「朝から夜まで家でテレビなどを眺めながら、一日中ぼんやりと過ごす」といった生活を送るようになってしまうと大変です。筋肉と同様、脳も使わなければどんどん退化しますから、認知症を発症しやすくなってしまうのです。
ホルモン不足は食事の見直しで改善できる
何もせずに放っておいたら、テストステロンの分泌量は年齢を重ねるたびに、どんどん減っていきます。
テストステロンの分泌量を上げるためには、まず食事で栄養を摂ること。詳しくは本書『老化を「栄養」で食い止める 70歳からの栄養学』(アスコム)に譲りますが、特にタンパク質や亜鉛など、テストステロンの生成に関わる栄養素を摂るようにしましょう。日々の食事に卵や牛肉、チーズ、ナッツなどをプラスすることによって、これらの栄養素を摂るようにしてください。