女性にも「テストステロン」が欠かせない

更年期前の女性の体内では、女性ホルモンのエストロゲンが、骨吸収を抑制する働きをしています。

女性は妊娠中や授乳期などに、大量のカルシウムを必要とします。そのため、エストロゲンは、骨吸収の速度を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑えているのですが、閉経によりエストロゲンの分泌量が減ると、テストステロンなどが代わりを務めます。

しかし、加齢などによりテストステロンまで不足してしまうと、骨吸収の速度を抑制するものがなくなります。その結果、骨密度が急激に低下し、骨粗しょう症になってしまうのです。現在の骨粗しょう症の判定基準によると、50歳以上の女性の約24%が骨粗しょう症になるといわれています。

窓際に座っている女性
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動脈硬化や脳出血、心筋梗塞のリスクが高くなる

血管を柔らかく保つ働きのあるテストステロンの分泌量が低下すると、動脈の血管の壁が厚く硬くなる「動脈硬化」も起こりやすくなります。動脈は、「全身に血液を送る」という、とても重要な働きをしていますが、その際、血管の壁には大きな圧力(血圧)がかかります。

特に、老廃物や脂質などがたまって血管が詰まり気味になっていたり、血液が汚れていたりすると、血圧はよけいに高くなります。大きな圧力がかかり続けると、血管は壁を厚くして、破れるのを防ごうとします。

しかし血管の壁が厚くなると、ますます血液の通り道が狭くなり、血圧は高くなります。こうして血管の壁はどんどん厚く、硬くなってしまうのです。

さらに、テストステロンの働きが低下することで、年齢を重ねると、より動脈硬化が起こりやすくなります。動脈硬化が起こると、血管は柔軟性や弾力性を失い、ちょっとしたことで傷ついたり破れたりしやすくなり、血流も悪くなるため、さまざまな病気を引き起こします。

たとえば、脳の血管が硬くなって血流が滞ると、脳出血や脳梗塞が起こりやすくなり、心臓に酸素や栄養分を運んでいるかん動脈が硬くなると、狭心症や心筋梗塞が起こりやすくなります。

勃起不全を甘く見てはいけない

ちなみに、動脈硬化の影響は細い動脈からあらわれると考えられています。

そして、心臓の冠動脈は直径約3~4mm、脳につながる内頚ないけい動脈は約5~6mmですが、男性の動脈で一番細いのは陰茎動脈で、直径約1~2mmです。陰茎動脈に動脈硬化が起きるとED(勃起不全)症状があらわれるため、EDは心血管障害の重要な予測因子であるといえます。

また、動脈硬化が起こると、血栓けっせんもできやすくなります。血栓とは、血液中の血小板が固まったものです。

血小板には、傷ができたときなどに血を固め、出血を抑える働きがあり、血管内に傷ができたときにも、そこにかさぶた状のものを作り、傷をふさぎます。それが何度も繰り返されると、血栓ができるのです。