※本稿は、平澤精一『老化を「栄養」で食い止める 70歳からの栄養学』(アスコム)の一部を再編集したものです。
性欲を高める「テストステロン」が長生きには欠かせない
テストステロンは「男性ホルモンの一種」として語られることが多く、「性欲を高める」「異性を惹きつける」といった働きばかりが注目されがちです。そのため、もしかしたら、「私には関係ない」と思ってしまう女性もいらっしゃるかもしれません。
しかし、テストステロンには、
・意欲や集中力、記憶力、判断力などを高める
・骨や筋肉を丈夫にする
・皮下脂肪や内臓脂肪をつきにくくする
・血管の柔軟性を保つ
といった働きがあり、私たちの体をさまざまな病気やけがから守ってくれています。
特に70歳以上の人は、こうしたテストステロンの働きがなければ、心身の健康を維持することが難しくなります。
テストステロンは、「長生きホルモン」といっても過言ではないのです。そして、男性の体内にも女性ホルモン(エストロゲンなど)が、女性の体内にも男性ホルモン(テストステロンなど)が分泌されています。
しかも、若いうちは、男性の体内では男性ホルモンが、女性の体内では女性ホルモンが優位ですが、閉経によって女性ホルモンの分泌が急激に減少すると、女性もテストステロンの影響をより強く受けるようになります。
最近の研究では、年配になると、テストステロンの分泌量が増えるとの報告もあり、65歳ごろになると、男女のテストステロンの分泌量はあまり変わらなくなるともいわれています。
骨や筋肉を丈夫にし、血管を柔らかく保ち、肥満を防ぐ
では、テストステロンがなぜ「長生きホルモン」といえるのか、もう少し詳しくお話ししましょう。すでにお伝えしたように、テストステロンには、「骨を発達させて強くする」「タンパク質から筋肉を作り、増強する」といった働きがあり、骨折しにくく疲れにくい体をつくってくれます。
また、テストステロンには、血管を柔らかく保つ働きもあります。テストステロンは体内で、窒素と酸素からなる酸化窒素という化合物の生成を促します。この酸化窒素が血管の平滑筋を緩め、血管の柔軟性が保たれるのです。
さらにテストステロンには、体内の余計なカロリーを、皮膚脂肪や内臓脂肪などの「白色脂肪細胞」ではなく、分解されやすく、どんどん燃焼して、筋肉が活動する際のエネルギー源となる「褐色脂肪細胞」に変換するという働きもあります。