すぐ子どもたちを追い出す父親

英子さんのこうした気質と共に、夫の存在も藤井家の子育てに与えた影響は大きい。

歯科医院を開業していた夫は、長男と次男には比較的厳しかった。そもそも2人はよく喧嘩をしていた。

父親に追い出された子どもたちをこっそり家に入れていた藤井さん(撮影=門川裕子)

「何か言うこと聞かないと、夫が『外へ出ていけ!』と家からつまみ出す。長男は、そのまま出て行くので靴がない。次男は靴を持って出て行き、公園で遊んでいる。それで探す羽目になり、次男は大変なことになる。一方の長男は『ごめんなさい』言うて、謝って来るから、夫に内緒で『2階へ上がんなさい』って言って」

親さんもよく覚えている。

「何かあると叩かれたりするのではなく、とにかく放り出される。親父は放り出したら、後はもう勝手にって感じで、ほとぼりが覚めた頃に、母親が裏から家に入れてくれる」

テストの点数を見せたことがない

父親は学生時代、硬式テニスで国体に行ったほどのスポーツマンだったが、それを子どもに強制することはなかった。

「子どもは、好きなことをさせたらいい」

その鷹揚さは、妻に対しても同じだった。

「干渉は全然ないです。何かをして文句を言われたことは一度もないし、勉強するにしても何も相談しないし、試験を受けることも何も夫には言ってません。何時から何時まで留守にするとは言いますけど、許可を得て、何かをすることは全くなく、自分の好き放題。それは、気楽に過ごさせてもらいました」

夫は子ども好きではあったが、べったりではない。たまに、子どもと食事に行く程度。藤井家には、程よい距離感が流れていたことを、親さんは感じていた。

「きょうだいも仲がいいとか、誰が好きとかもないし、親もいつも2人でいて仲睦まじいとかもないし、適度な距離感ですね。だからお互い干渉もしないし、何も言わない。それで何か、悪さをするわけでもない」

子育てや生活全般について、夫と意見の相違はなかったと英子さん。親さんは、両親をこうみていた。

「子育てのポリシーとか、親からあまり感じなかったし、こうしないといけないとか、こうなりなさいとか、親から言われたことはなかったです。勉強しろと言われたこともない。だから、私自身も親に点数のことを報告しない。テストの点数なんか、見せたこともないし」

父も母も、子どもの成績にあまり「頓着はない」。