養子縁組されても実子としての関係は続く

通常の養子縁組の場合は、養子縁組されても、実子としての関係は続きます。このケースでは、もしこの男性が死亡した場合、離婚した妻は遺産相続とは関係ありませんが、子ども2人との関係は維持されたままになります。

すなわち2人の子どもが自分の遺産を2分の1ずつ分け合うことになります。

将来予定される遺産分割だけにこだわっているわけではありませんが、長女のことはあまりにも事実に反することですので、親子関係がないことを確定しようとしたわけです。養子縁組にからんだ遺産相続についてもご存じではない方が多くいらっしゃると思いますので付言させていただけば、2人の子どもは妻の再婚相手と養子縁組したことによって、相続権が発生します。すなわち、元夫の実子である長男については、養子縁組されたことによって、実親と養親との2人の父親から遺産相続する権利を得ました。

この男性は離婚については、虚偽に提出されはしましたが、離婚を認めることにしました。しかし、もしこの男性が妻との離婚を望んでいない場合には、離婚無効の調停を家庭裁判所へ申し立てる必要があります。調停で相手が合意すれば、審判で離婚無効となります。しかし、もし調停で合意が成立しなければ、家庭裁判所に訴訟を提起する必要があります。

同居していても気づかれなかった妊娠

もう一つ不思議なケースを見ておくことにしましょう。

前述のケースは実質的には別居していたと言ってもいい単身赴任期間中に、妻が別の男性の子どもを出産し、結婚している夫婦の子どもとして出生届を出していた例でした。男性は、帰宅の頻度が極端に少なく、妻の生活についてきちんと把握できなかったため、妻が妊娠したり、出産したりということにまったく気がつかなかったというケースです。

写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

これも確かに不思議なことですが、実は一緒に暮らしていても妻が別の男性の子どもを妊娠しているということに、出産間近でも気がつかないというケースがあります。

ケース2
〈年齢〉元夫:30歳代後半 元妻(母親):30歳代前半
〈職業〉元夫:会社員 元妻(母親):アルバイト
〈子ども〉長女:0歳
〈背景〉離婚して2カ月後に出産
子どもはまだ出生届が出されていない
〈経緯〉子どもの法定代理人親権者の母親から「親子関係不存在確認」の申立

2人は6年前に結婚し、半年前に市役所に離婚届を出して協議離婚しました。

元夫は、離婚して4カ月後に、家庭裁判所から一通の封書を受け取りました。それを開封して、そのなかの書類を見て驚愕しました。封筒には、確認のための問い合わせの書類が、元妻から家庭裁判所へ提出された「親子関係不存在確認」の申立書の写しとともに入っていました。

元夫は離婚の直前まで元妻と生活をともにしていたのですが、元妻が妊娠していたとはまったく気がつきませんでした。元妻は、離婚して2カ月後に子どもを出産していました。さらに、その子どもは自分の子どもではないとのことです。