北極評議会のオブザーバー国にもなった
このような全般的な海洋進出強化のトレンドのなか、中国は2012年に第5次北極科学観測を行います。この年は1979年の衛星観測開始以来、北極海の氷が最も少なくなった年でした。
砕氷船「雪竜」は往路アイスランドに寄港、復路において、北極海沿岸国以外では初めて北極点付近を横断する北極海中央航路、真っすぐに北極海を横断する最短ルートに挑戦しました。「北極海航路を経由し大西洋と太平洋を往復した。北は北緯87度40分に達し、中国の船舶が高緯度から北極海を航行する先例を築いた」と高らかに宣言し、その成果を誇ります。(「中国の北極観測、これまでの歩みを振り返る(6)」、人民網日本語版2016年07月13日)
2013年には北極評議会(Arctic Council:AC)のオブザーバー国として、日本や韓国等と同時に認定され、北極における発言力強化の足掛かりを得ることとなります。
国家方針に基づき活動を強化する。そして実績を上げ、その結果を前面に国際社会での認知を上げれば、国際的な立場が強化され、国内外での発言力が強化される。そして国家の威信向上に貢献する。その結果、国内における組織・個人の認知、地位向上に繫がる。これは中国における国家中心の官僚主義・成果主義の組織の中では素晴らしい流れです。
最大の関心は資源開発にあり
中国は2014年には第6次、2016年には第7次観測を成功させました。ここまで2年ごと、偶数年に実施されてきた北極観測ですが、2017年の第8次観測ではカナダ側の北西航路で観測航海を成功させ、「中国は北極の3航路の航行と科学観測のフルカバーを実現した」と報道されるに至ります(「北極3航路の航行を終えた中国、『氷上シルクロード』の建設を促進」、人民網日本語版2017年11月02日)。
国家海洋局は観測隊が10月に帰国した際、記者会見において、2017年からは北極観測の頻度を従来の2年に1回から年1回とし、北極観測態勢を強化すると表明します。同局副局長の林山青は、中国が「近北極圏国」であることを強調しつつ、「中国の北極科学観測は今後、さらに新たな事業分野を切り拓く」と述べ、北極への関与姿勢強化方針を示しました。
これらはすべて「科学調査」と呼ばれる調査・研究ですが、当時から中国の最大の関心は資源開発であり、並行して資源調査も行った模様と報道されていました。