ポイントアップを知らなかったことで「バカにされた」と激怒

客の話を聞くと、ポイントアップキャンペーンを知らずに購入したことで、自分が損をしたことに腹を立てていることがわかった。それを知らせなかったのは自分をバカにしているからだという思い込みで攻撃的になっているらしい。

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こういう被害意識の強い人は、自分が損をしたのは店の悪意や敵意のせいだと思って攻撃的になっている。こういうタイプには、怒らせたり、被害意識や被差別感を煽ったりすると悪化するので、応戦せず落ち着かせるべきだ。

「おっしゃることはごもっともです」

決して差別的な態度をとっていないことを示すのも、このタイプには大切だ。Fさんは、穏やかに言葉を続けた。

「お客様にはいつもご利用いただいて感謝しております。もちろんポイントアップもさせていただきますから、商品とレシートをいただけますか? カードをお忘れでもご登録いただいている電話番号でポイントを付与させていただきますね」

Fさんの態度と対応に、客も「そう?」と拍子抜けしている。レジでポイントをつけると「さっきは悪かったね、騙されたようでついね」と謝罪する客に、いま一度Fさんは「ごもっともです。いつもありがとうございます」と共感を示し、セール予告のチラシも手渡した。

研修などで「怯えなくてもいい」と教えることが有効

もちろん、こうした応対はやれと言われて早々にできるものではない。人から怒鳴られる、罵声を浴びせられることは、多くの人にとっては本来あまり経験のないもので、恐怖で身がすくんだり脈拍数が上がってドギマギしたりするものだ。そのため、研修や指導を通して「怯えなくてもいい」という認識を持ち、冷静に応対にあたることを身につけるだけでも、心持ちに大きな変化がある。「毅然きぜんとした態度をとる」場合も、客のタイプに応じたアプローチがある。

この判断も瞬時にできるものではないから、学ぶだけではなくトレーニングをすることで、現場でも実践できるようになる。被害経験を積むのではなく、プログラムやトレーニングの経験を通して身につけてほしい。