バイク便ライダーの同僚は事故で大ケガ

そこで当座の生活費を得るために始めたのがバイク便ライダー。

「出来高制で日給1万円以上というふれこみだったけど、そんなには稼げません」

勤務時間は朝9時から夕方6時まで。出社した時点で仕事を振られ現場へ直行、その後はスマホで連絡を受けて次の現場へという流れ。

「空白時間が結構あるんですよ。公園や図書館で待機していることが多かった」

新宿から群馬県の高崎市までとか、池袋から成田空港までというような長距離の仕事が入れば歩合も大きいが、そんな美味しい仕事はめったにない。

「平均すると1日9000円がいいところでしたね」

バイク持ち込みの請負仕事なので経費は全額自分持ち。ガソリン代、オイル交換代が自己負担というのも痛かった。

「ガソリンは1日5リットル入れていました。リッター160円として900円、月20日走ったら1万8000円。大きい金額です」

何とか1日9000円稼げてもガソリン代で900円、ご飯代が500円出ていくので残るのは7600円程度。割のいい仕事ではなかった。

「あとは交通違反ですよね。実は1回やっちゃいまして。速度超過で減点1、反則金7000円でしたよ」

これでは実入りはほとんどなし。何のために働いているのか分からない。

「雨の日は合羽を着用しても下着までビショ濡れ。風の強い日は横方向の強風にあおられ、バランスを崩して転倒しそうになる。もらい事故も心配です」

ほとんど交流はなかったが同じ営業所にいた人が事故で大ケガしたこともあり、もう嫌だと2カ月で辞めることにした。

まったくの畑違いで新人だから給与は新卒とほぼ同額

「その後、ハローワークに日参し、何とか不動産管理会社に採用され失業状態からは脱せられました。だけど労働条件は良くありませんね」

写真=iStock.com/Pattanaphong Khuankaew
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正社員として採用されたのだが、うちではまったくの新人だからという理由で初任給は大学新卒とほぼ同額の22万円ほど。仕事は大型ビルでの警備、清掃、駐車場管理、電気・空調などの管理全般。

「土日、祝日は休めるし残業も少ない。外食にいたときはローテーション勤務で土日、祝日、ゴールデンウィークでも交代で出勤し、残業は毎月60時間以上、そのうち20時間はサービス残業でした。これに比べたらはるかにまともなんですが、収入がねえ……」

10時間前後の残業代、住宅手当が加算されても給料は額面で約25万円。手取りになると21万円と少しという金額になる。

「前の仕事は店長手当と残業代が付いて32~33万円、手取りで27万円近くありましたから大幅な減収ですよ。転職したり再就職して給料が良くなる人は少ないというから仕方ないです。まったくの畑違いで新人ですから」