年収450万円ちかい彼女からの言葉

自分では納得していたが、同居していた彼女に明細書を見せると「何これ? 安過ぎるんじゃない?」と顔色が変わってしまった。

「前は年収で450万円ぐらいあったんです。新しいところでは賞与込みでも360万円ぐらいだと思うって彼女に正直に話したら、それでどうやって生活していくのって嫌な顔をされました」

これがきっかけですきま風が吹き始め、次第にギクシャクしていくことになる。

「彼女は2歳下で信販会社に勤めています。給与水準は高い業界だしコロナの影響もさほどなかったようです。年収は前の自分と同じくらいの450万円近い金額なんですね。もうちょっと収入の高い仕事に就いてよって言われちゃいました」

彼女は専業主婦願望が強く、結婚後は少しの間だけ働いて家に入りたい。早く子どもを産んで子育てに専念したいと思っていたそうだ。

「余裕のある生活は望めない。子どもを産めない。マイホームも無理そう……。愚痴っぽいことばかり言われてイライラしてくることが度々あったんです」

正直なところ、こんな馬鹿な女だとは思わなかったという気持ちになり、やること言うことすべてが癪に障るようになった。

「どうでもいいようなくだらないことで喧嘩するようなこともあり、もう一緒に暮らせないという結論に至ったわけです」

金の切れ目が縁の切れ目

彼女が出ていったのは約2カ月前。最後はほとんど会話もなかった。

「金の切れ目が縁の切れ目っていうのは本当ですね」

互いにプレゼントした物は返してもらったし、自分が買った目覚まし時計や空気清浄機は持ってきた。反対に彼女が費用を出した電子レンジと布団乾燥機は持っていったそうだ。

これできれいさっぱり御破算。

もう嫌でたまらなかったから気持ち的には清々した。だけど経済的にはピンチ。

「同居していたときは互いの収入から毎月13万5000円ずつ出しあって、すべての生活コストを賄っていました。住まいは2DKのマンションで8万4000円の家賃は問題なかったけど、今の自分の収入だけでは重たいです。なので引っ越しを考えたわけです」

配属されている新宿の現場まで電車1本で通えるよう、京王線沿線のアパートに移ってきたという次第だ。

1Kで23区外ということもあって家賃は4万5000円と格安になった。

増田明利『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)
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「生活全体もかなりダウンサイジングしました。家賃と水道光熱費で6万円、保険と奨学金の返済で3万円出ていくので12万円ちょっと残るけど5万円は別の口座に移して手を付けないようにするつもりです」

短期間だが失業期間があり、お金のありがたみは身に沁みた。

「不測の事態があったとしても何とか4カ月ぐらい生活を維持できるよう備えておかないと危険ですよね。宝くじで大当たりなんてあり得ないし、誰かが助けてくれるわけでもない。そもそも助けてくださいなんてみっともなくて言いたくないし」

お金のことばかり考えるのは卑しいと言われるかもしれないが、やっぱりお金は大事だと思う。

「今思うのは、あの人と結婚しなかったのは正解だったということ。きっと破綻すると思いますね」

賃金は低くても定職がある、やらなければならないことがあるのはありがたいと感じる。もう失業は懲り懲りだ。

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