いまでは絶対に許されないようなおぞましい接待も

最近はあまり聞かなくなったが、当時の専売公社は大蔵省を定期的に接待していた。いわゆる官官接待というものだ。

私が出入りできないような高級料亭での接待もあった。あえて具体的には書かないが、なかには、いまでは絶対に許されないようなおぞましい接待もあった。

私も何回か同席させてもらったのだが、楽しむことなんてできなかった。少しでも阻喪そそうをすれば、たいへんなことになるのがわかっていたからだ。

大蔵省の職員が飲み食いした請求書が回ってきたこともあった。なぜそれがわかったのかというと、専売公社主計課の係長が、私の友人の名前を聞いてきたからだ。彼らが出席したことにして、架空の会議をでっちあげて、経費処理するのだ。

係長に「そんなことをしてもいいんですか」と聞くと、係長は「予算っていうのはね、現金を買うことさえできるんだよ」と苦笑いしながら答えた。

予算というお金に頭を下げているにすぎない

なぜこんな話をしているのかと言えば、大蔵省の役人は、そうした環境のなかで、あっという間におかしくなってしまうということをわかってほしいからだ。

自分の周りの人間が、誰しもひれ伏してくる。自分の命令には、みなが絶対服従だ。

森永卓郎『ザイム真理教』(三五館シンシャ)

本当は、大蔵省の役人に頭を下げているのではなく、予算というお金に頭を下げているにすぎないのだが、それには気づかないのだ。

いまでは、本当に反省しているのだが、私自身も大蔵省と同じ病気にかかってしまった。

私の仕事は、大蔵省から予算をとった後、今度は工場や支社に予算を配分する立場に変わる。そうなると、今度は自分が「ミニ大蔵省」になってしまうのだ。

関東支社の予算課が声をかけてきた。

「森永さん、今度、忘年会をセットするので、来ていただけませんか」

社内版の官官接待だ。それに対して私はこう言い放ったのだ。

「行ってもいいけどさ、女連れて来いよな」

そして、関東支社は、予算課に勤務する若い女性社員を連れてきた。それが現在の妻だ。

だから今でも時折、妻は「私は人身御供にされた」と言う。

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