「東京28区は都連で候補を決めている」

茂木氏は、石井、伊藤両氏の出馬については容認したが、3月の公明党の擁立発表に自民党埼玉、愛知両県連など地方組織は反発し、事前の根回しを怠った茂木氏への不信感が高まった。同時に、党内をまとめられないとして、公明党・創価学会からの目が厳しくなったことをも意味する。

茂木氏は、5月23日の石井氏との会談で、「東京28区は既に都連で候補者を決めている」として公明党の要求を拒否し、代替案として東京12区(北区、板橋区の一部)または東京15区(江東区)を挙げた。

この回答は、5月17日に首相官邸で開かれた岸田首相、茂木氏、萩生田光一政調会長(都連会長)、森山氏の協議で確認した決定に基づくものだった。

公明党本部(写真=あばさー/PD-self/Wikimedia Commons

西田氏は、茂木、森山両氏が2月の段階で公明党の東京28区擁立の意向に対して「最大限努力する」と応じていたと問題を蒸し返したが、公明党の情報収集不足は否めない。

代替案については、12区が29区に移った岡本氏が返上した選挙区、15区は自民党現職の柿沢未途氏が出馬の意向を持っていることから、公明党に再検討の余地はなかった。

「連立に影響を及ぼすつもりはない」

公明党・創価学会は、猛然と反発した。佐藤氏らは、24日の党東京都本部の会合で以下の5項目の方針を決定させ、党都本部代表の高木陽介政調会長に対応を一任した。

□ 東京28区に公明党は候補を擁立しない
□ 東京29区で自民党の推薦を求めない
□ その他の都内の衆院小選挙区で自民党候補を推薦しない
□ 再来年の都議選などの都内の選挙でも協力しない
□ 都議会での協力関係も解消する

翌25日の自公幹事長会談では、石井氏がこれら5項目を提示し、「東京に限定している話で、連立関係に影響を及ぼすつもりはない」と付言した。茂木氏が「持ち帰って検討したい」と応じたが、石井氏は「これが党の最終的な方針だ」と突き放したという。

自公政権は、政策や理念の合意によるのではなく、相互の選挙協力を前提とする特異な連立政権だ。1999年の連立スタート以来、東京限定とはいえ、選挙協力をめぐって、ここまで拗れた例はない。

岸田首相は、冷静に受け止め、周辺には「公明党は時々、こういう乱暴なことをやるんだよ」とあきれて見せた。

念頭にあるのは、今回の対応だけでなく、菅義偉政権当時の2021年に、自民党の河井克行・元法相の公職選挙法違反事件で空白となった衆院広島3区を、公明党の比例中国ブロック選出だった斉藤鉄夫氏(現国土交通相)に奪われたことだ。公明党・創価学会は「広島3区でこちらに協力しなければ、全国の岸田派議員を支援しない」と、岸田氏に圧力を掛けてきていた。