「エプスタインがお金を出すことに同意し、学校に直接支払ってくれた。見返りを提供したわけではない。なぜそうしてくれたのかは分からない」と、アントノワは話している。「理由を尋ねると、自分は金持ちで、できる限り人の助けになりたいから、というようなことを言った」

エプスタインのニューヨークのアパートに短期間滞在したこともあると、アントノワは明かしている。だが滞在中、エプスタインとも、ほかの誰とも交流することはなかったという。

情報提供者らの証言によれば、ゲイツがアントノワと不倫したとされる時期から数年後の17年、エプスタインはゲイツに連絡している。そこでエプスタインは、アントノワのプログラミングスクールの学費を返済するようゲイツに要求。メールの文面は、(自分はゲイツと)アントノワとの関係を知っており、場合によっては不倫を暴露すると示唆している印象だったという。

アントノワの学費をめぐってエプスタインに支払いを行ったことを、ゲイツの広報担当者は否定した。「エプスタインとの金銭的取引は存在しない」と述べ、ゲイツがエプスタインと会ったのは「慈善活動のためだけだ」と語っている。

寄付を断ったゲイツへの仕返しだった?

エプスタインが問題のメールを送ったのは、数十億ドル規模の慈善基金を設立し、ゲイツを大物寄付者の一人として加える計画に失敗したことが原因だと、ニコリッチはみている。この時、エプスタインへの協力を、米銀行大手JPモルガン・チェースとゲイツは断っている。

「今から思えば、ビル・ゲイツに仕返ししようとしていたのだろう」。ニコリッチは言う。「エプスタインと知り合ったことを深く後悔している」なお、ニコリッチは「(エプスタインの)犯罪行為などを目にしたことはない」としている。

アントノワも、エプスタインのことを「力を貸そうとする成功した実業家」だと考えていたようだ。「エプスタインと、彼がしたことにはぞっとする」

児童に売春をさせた容疑で08年に有罪判決を受けたエプスタインは、フロリダ州とニューヨーク州で未成年者の性的人身売買を行ったとして、19年に再び逮捕された。同年8月10日、エプスタインは刑務所の監房内で死亡。検視の結果、死因は首つりによる自殺とされている。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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