畑村洋太郎式文章術

工学院大学教授
東京大学名誉教授
畑村洋太郎

1941年、東京都生まれ。66年日立製作所入社。68年東京大学工学部助手。83年同教授。2001年畑村創造工学研究所開設。著書に『技術の創造と設計』『みる わかる 伝える』ほか。

蕎麦屋でおいしい蕎麦を食べたとします。その店の魅力を文章で伝えるとき、どう構成を考えればよいでしょうか。

おいしいと感じた理由を分解すると「蕎麦」「汁」「器」「接客」など、さまざまな要素を思いつくはずです。もちろんこのまま要素を並べても、相手には伝わりません。そこでまず各要素のつながりを理解して、「おいしい蕎麦屋」を構造化する必要があります。

構造化には図を活用します。要素を白紙にランダムに並べて、属性が同じ要素をキーワードで括ります。たとえば「蕎麦」「汁」「エビ」といった要素は、「味」という上位概念(キーワード)で括られます。次にキーワード同士の関係を考えて線でつなぎ、全体像を把握します。こうしてできた図を“思考展開図”といい、あらゆる事象は、この図で構造化することができます。

あとはこれを文章化するだけです。全体構造がわかれば、文章の構成は難しくありません。いきなり関係のない要素が割り込んできたり、本来なら因果関係のあるキーワードが離れ離れになるといった混乱も防げるはずです。

もし構成に迷ったら、思考展開図に立ち返ってください。図と文章を何度も往復することによって理解が深まり、構成もよりクリアになるでしょう。

思考展開図では、助詞や接続詞にあたる線を使いません。一目で要素やキーワードの関係がわかるので、いちいち矢印を使うなどして、お互いの関係性を強調する必要性がないのです。

実は文章化する際も、過度に助詞や接続詞を使う必要はありません。副詞や形容詞も不要です。これらで関係性を強調しなければいけない文章は、構造化がきちんとできていない証拠。全体構造がつかめていれば、文章はシンプルになるはずです。

(村上 敬=構成 相澤 正、熊谷武二=撮影)
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