シンプルでロジカルな文章は、実は理数系人間が得意とするところ。新発想の文章術をプロが指南。まずは長文との決別から始めよう。

小飼弾式文章術

ブロガー、プログラマー、投資家
小飼 弾

1969年生まれ。96年ディーエイエヌ有限会社設立、99年オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)CTO(取締役最高技術責任者)。著書に『小飼弾のアルファギークに逢ってきた』『弾言』など。

はじめから自分の個性に気づいている人はほとんどいません。人はどうやって個性を知るのか。出発点はパクリです。

たとえば上司に報告書を書くなら、まず自分が気に入っている上司や先輩の報告書をそのままパクってください。報告書のスタイルに著作権なんてないのだから、好きなだけパクればいい。

そっくりそのまま人の文章をパクっていると、やがて「自分ならこう書くのに」という違和感が生じます。この違和感こそが、何を隠そう個性の正体。つまりパクることなしに個性を語ることなどできないのです。

かつてピカソは、「凡人は真似る。天才は盗む」と言いました。凡人は単にコピーを繰り返すだけで、天才はコピーにアレンジを加えて自分のものにするという意味ですが、結局、どちらも起点はパクリです。天才の個性も模倣から生まれるのですから、とにかく気にせず真似をすればいいのです。

実はパクリも楽ではありません。同じものを何度も真似ていると、しだいに面倒になり、もっと楽をしたくなります。プログラマーは、同じ命令文を何度も書くことを嫌います。プログラムに同じ命令文が出てきたら、それらをひとまとめにして書き直し、作業を簡素化します。そのまとめ方にプログラマーのセンスが表れる。

文章も、これに似ています。人の文章を何度も真似ると、「これは毎回使うフレーズだ」「お客様にも見せる場合は、いつも構成が同じ」というように、何らかの共通項が見つかります。それに気づけば、自分なりのフォーマットをつくって作業を楽にすることもできます。そこまでいけば、すでに立派な個性です。「真似る」から「盗む」のレベルに到達したといっていいと思います。