シンプルでロジカルな文章は、実は理数系人間が得意とするところ。新発想の文章術をプロが指南。まずは長文との決別から始めよう。

鎌田浩毅式文章術

京都大学大学院
人間・環境学研究科教授
鎌田浩毅 

1955年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業。専攻は火山学。学生からの講義の評価は教養科目の中で1位。著書に『中学受験理科の王道』『一生モノの勉強法』『火山噴火』など。

文章の構成は「三部構成」を意識すべきです。人が同時並行的に処理できる数は諸説ありますが、3が上限です。少なくとも3つまでなら要素同士の関係がわかりやすく、読み手も混乱しにくい。

三部構成には、「序・破・急」「仮説・検証・結論」など、いろいろなパターンが考えられます。私がよく利用するのは、弁証法の概念である「正・反・合(A、notA、B)」。弁証法というと難しそうですが、主張したい意見(A)と、反対する意見(notA)、さらに正反対の2つを統合するような意見(B)で論理を構成する方法だと考えてください。とくにビジネスでは、何をやるにしても反対意見が出てきます。あらかじめそれを踏まえて構成を組めば、説得力のある文章になるのです。

長い文書になると、全体の三部構成の下に章や項目をつくって細分化する必要があります。章や項目も「3」を単位にして構成すれば、まとめやすいはずです。

いざ書いてみると、想定した構成通りにいかないことがよくあります。そうした場合に備えて、あとから文章を整理しやすい工夫もしておきたいところです。

とくに意識してほしいのは見出しです。章や項目につける見出しはもちろん、私は本文も数十行ごとに細かく分割して、小見出しをつけています。文章を逐一読みながら構成し直すのは時間がかかりますが、見出しでラベリングすれば、中身を読まずとも整理が可能です。

パラグラフ単位の構成も視野に入れて、各段落は、その段落の要約文(トピックセンテンス)から書き始めるといいでしょう。段落ごとに見出しをつける必要はありませんが、この方法ならトピックセンテンスがラベルの役割を果たしてくれるので、効率的に入れ替えができます。