SNS上のきらびやかな生活に憧れて闇バイトに応募
警視庁の関係者B氏も「犯罪白書」のデータとは異なる感覚を現場で感じているという。
「最近はきらびやかな生活に憧れた若いヤツが金ほしさにSNSで募集しているバイトに応募して、犯罪行為に加担してしまうケースが多いようだ。SNSの投稿で、高級時計や外車を乗り回してることを想起させるものを見かけるでしょう。よく『スマホ1つで簡単に稼げる』みたいな文章が書かれているけど、あんなのウソ。でも、若いヤツは本当だと思い込んで、応募してしまうケースがあるんだよ。そんなうまい話なんてあるわけないんだけど」
SNSで実際に検索をしてみると、いまでも「簡単に稼げる」「初心者でもできるお金を稼ぐ方法」「1日たったの2〜3分だけ」といった文言が見られる。
ただ、闇バイトに加担しても実際に手に入る現金は提示される額よりも少額だ。前出の21歳男は、犯行前に600万円の報酬を提示されたという。だが、実際に手にした十数万円程度。B氏によれば「ただ利用されただけ。使い捨てだ」という。
個人情報を握られて「やるしかない」状況にされる
一方で、闇バイトに応募した後に違和感を覚えて抜け出そうとしても抜け出せない実態があるという。警視庁関係者B氏が実態を説明する。
「闇バイトに応募すると、まず身分証明として運転免許証を提示させられる。そして、自身や家族の情報を握られ、何かあれば危害を加えると脅される。脅している間に交通費などが振り込まれ、やるしかない状況ができあがってしまう。いくら脅されたとはいえ、初犯でも未成年の場合は長期少年院送致、成人であれば実刑がつく」
実際、21歳男は、3月24日の判決公判で「動機や経緯に酌むべき事情は見当たらない」として、懲役10年(求刑懲役12年)が言い渡されている。
前出のアングラ関係者A氏が警鐘を鳴らす。
「強盗で手に入れた金を持ち逃げしたならありえるけど、飛んだ(逃げた)からといって、指示役もわざわざ家に行くほど、ヒマではないんだよ。闇バイトに応募してしまっても、実際に犯罪行為に及ぶ前に警察に相談したほうがいい。応募したことについては怒られるけど、まだ犯罪行為をしていないなら逮捕はされない」
今回取材したアングラ関係者A氏と警視庁関係者B氏が共通して話していたのは、「1日で100万円を稼ぐ」というような美味しい話は絶対にあり得ないということだ。一方で、そんな当たり前のことを理解できない若者たちがいるという現実に目を背けてはいけない。