詐欺より強盗のほうが「コスパ」がいい

なぜ強盗なのか。A氏が背景を説明する。

「詐欺でパクられた場合は10年以下の懲役だが、強盗だと初犯は5年から7年くらいでシャバ(刑務所の外)に帰ってこられる。詐欺はいま警察の締め付けが強くなっているから、量刑は重くなりやすい。だから、強盗をやらせるんだよ」
「ぶっちゃけ、詐欺より強盗のほうが『コスパ』がいい。強盗は1回で得られる金額も高くて、2000万円とか手に入れられる。去年の中野区の強盗なんて、資産家宅から現金3000万円を奪っているでしょ。詐欺なんて、1日に何百件も電話した上で『受け子』にキャッシュカードを取りに行かせて、『出し子』にATMから引き出してもらう。手間がかかりすぎる」

ただ、強盗が「恥」とされている最近の暴力団員は、自らの手を汚すことはしないという。A氏が続ける。

「ヤクザは『自分で稼いでこい』と話すだけ。だから、指示を受けた頭の悪いやつは、安易に時計強盗に走ってしまったりする。だからといってね、日中に高級時計店を襲撃するような粗末な強盗をやらせるとは思わなかった。そのうち、路上で高級時計をつけて歩いている人とかを襲撃し始めるんじゃない。まあ彼らにとっては10万円でも大金だから。そのくらい払っておけば、若いヤツは簡単にやってしまうからね」

統計では未成年による犯罪は減っているが…

法務省が発表している「令和4年版犯罪白書」によると、2021年における未成年の刑法犯の検挙人数は2万399人。現行の方法で記録を始めた1966年から、過去最低を記録した。最も多いのは窃盗で、強盗は全体の1.1%に留まる。

一方で、去年から今年にかけて、強盗事件の実行役として未成年が逮捕される事件が相次いでいる。今年1月に東京都狛江市で起きた強盗殺人事件では、実行役としてみられている5人のうち、1人が19歳の男子大学生だった。また、去年12月に広島市で起きた49歳の男性が現金など2400万円相当を奪われた強盗殺人未遂事件でも同じく、実行役のうち、1人が18歳の男だった(年齢はいずれも当時)。

狛江市で発生した強盗殺人事件の被害者が住んでいた家。
狛江市で発生した強盗殺人事件の被害者が住んでいた家。(写真=イカしたイカ/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

未成年が刑事罰で起訴された場合、家庭裁判所で非公開の「審判」によって、少年院送致などの決定が行われるため、原則、裁判内容を傍聴することはできない。

ただ、逮捕された男たちと年齢が近いケースでこんな裁判事例がある。2023年3月、ツイッターやインスタグラムなどのSNSで募集された闇バイトに手を出し、貴金属店への強盗などの罪に問われた当時21歳の男の裁判員裁判が、大阪地裁で開かれた。21歳男は裁判のなかで、闇バイトに手を染めた理由を「楽して稼ぎたかった」と話した。