東電RPの水利権更新ではだんまりを決め込む

川勝知事は、朝日新聞(2020年8月12日付)や『中央公論』(2020年11月号)で、「命の水を守る」理由の1つとして、大井川中流域の「水返せ」運動を取り上げている。

ここでも中流域と下流域を一緒にしてしまい、リニア問題と全く無関係の「水返せ」運動が下流域の利水の「命の水を守る」と同一であるかのようにごまかした。ほとんどの人は「水返せ」運動と、川勝知事の「命の水」が密接に関連すると信じ込まされた。つまり、全国的に有名な「水返せ」運動を、リニア問題を訴えるためのダシに使ったのだ。

川勝知事は2014年春にも『中央公論』で、リニアトンネル掘削で水量が「毎秒2トン減少する」との予測に「“命の水”を守るために立ち上がった」と書いている。

2014年に“命の水”を守るために立ち上がった川勝知事なのに、2015年12月の田代ダムの水利権更新の際、中流域の求める「水返せ」に一切対応しなかった。

毎秒4.99トンの流出に比べればリニアの水はごく微量

リニア問題では「水一滴の県外流出を許可できない」と嫌がらせを続ける川勝知事だが、田代ダムから毎秒4.99トンという膨大な水が山梨県へ流出していくのを止めることはできない。

現在の田代ダム案で問題にしているのは、毎秒0.2トンであり、それも10カ月間の期間限定である。

リニアトンネルに関わる水問題は、田代ダムから山梨県へ流出する膨大な水の量から見れば、静岡県にとっては大した問題ではないことがわかるだろう。

筆者撮影
田代ダムの水利権許可の使用標識(静岡市)

ところが、川勝知事は取水抑制が東京電力RPの水利権と関係しているなどと何度も横槍を入れ、田代ダム案をつぶすのに躍起となった。

次回の水利権更新は2025年12月末だが、リニア問題とは全く切り離して議論しなければならない。