インバウンドの増加と賃上げ
コロナが5類に移行し、多くの規制が消えつつあります。私も、コロナ前のように出張が増えてきました。毎週のように新幹線に乗っていますが、新幹線では外国人観光客が格段に増えていることが分かります。一車両の半分くらいが外国人の場合もあります。
また、東京の繁華街や地下鉄では、大きなスーツケースを引っ張っている外国人の姿をよく見かけるようになりました。インバウンド旅行客が戻ってきています。統計的には、ピークの2019年(年間で3188万人)のペースにはまだ達しておらず、2023年の4月では7割弱ということですが、今後も増加が予想されます。
それだけではありません。日本人の旅行客も多くなりました。全国旅行支援が一部では続いていることもありますが、コロナにより制限されていた旅行を再開する人たちも増えているのでしょう。
また、インフレがピークで4.1%まで達したことがあり、大企業を中心に賃上げが進みつつあります。図表1は全産業の一人当たりの給与の前年比の伸びを表したものです。このところ伸びが続いています。ただし、この数字はインフレ調整前の数字で、インフレを加味した実質賃金は12カ月連続でマイナスが続いています。
この先、インフレ率(現状3%程度)をカバーするかは微妙なところですが、大企業中心ではあるものの、賃上げがある程度進むことは、景気にはプラスに働くことは言うまでもありません。
景気指標でもそのことが確認できます。図表2の街角景気の数字をご覧ください。街角景気は景気ウォッチャー調査とも言われることがありますが、経済の最前線にいて景気に敏感な人たちに内閣府が各地で調査をしているものです。
景気に敏感な人たちとは、タクシー運転手さん、小売店の店頭にいる人、ホテルのフロントマンなどです。中小企業の経営者にも調査しているとのことです。変わったところでは、ハローワークの受付の人も対象ということです。
それらの人たちに景気が良くなっているかどうかを調査し、数字が「50」を超えていると「良くなっている」と答えた人のほうが多く、下回っていると「悪くなっている」というふうに答えた人が多いということです。
この数字を見ると、2022年の年初やその途中にはコロナの影響により、50を切って大きく落ち込んでいた時期もありましたが、秋には持ち直し、その後少し低下していました。それが、2023年の2月、3月には50を超えるところまで戻しています。経済の最前線にいる人たちには景気回復の足音が聞こえているのです。
図表2には自動車販売台数が出ています。2022年の1月以降の数字と2023年の1月以降の数字を比べると、月に5万台程度確実に伸びています。この2年の比較をすると、1月38万2000台(+5万2000台)、2月35万5000台(+7万2000台)、3月51万3000台(+5万9000台)、4月35万台(+5万台)となっています。4月のブランド別では、ダントツ1位はトヨタで11万台超、前年同月比の伸び率で圧倒的だったのがトヨタの高級車ブランド・レクサスで245%でした。
こうした自動車業界の好況の背景にあるのは、半導体不足が解消されたことと、国内の消費がコロナ明けということもあり、旺盛になってきているからです。コロナの時に積みあがった貯蓄が徐々に消費に回りつつあるからです。