38歳エンジニアのこの男性は、NATOの軍拡を防ぐためになるのだと信じ、スペツナズの義勇軍に参加したという。メッセージアプリのTelegramで見た情報をもとに応募すると、6カ月の参加が許された。隊の兵士の半分はこの男性と同じように、まったくの軍隊未経験者だったという。高校を出たばかりの若者から、白髪の老人までが、ボランティアとして同じ隊に所属していた。

スペツナズとは名ばかりで、訓練は十分でなかったようだ。「訓練場には2~3回行っただけです。AKやマシンガンを何発か撃ちました」と男性は語っている。1カ月ほどを訓練に費やしたが、いかに狙いを定めるかといった技法は、ついに教わることがなかった。新人の足下を教官が狙撃し、戦場に慣れる訓練などを受けたという。

インサイダーは、結局のところ多くの、あるいは大半のスペツナズは、徴兵制による寄せ集めであると指摘している。通常の兵士よりは「特別」だが、アメリカのグリーンベレーやイギリスのSAS(陸軍特殊空挺部隊)とは比肩しないとの評価だ。

2023年5月9日、モスクワの赤の広場で行われた軍事パレードに出席したプーチン大統領(写真=Минобороны России/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

短期決戦というプーチンの目論見が裏目に出た

一方、ロシア軍内に視点を絞れば、比較的高いスキルと装備を有する部隊であることに間違いはない。その壊滅はロシアにとって大きな痛手だ。米CNNは「特殊部隊は数年にわたる訓練を要し、攻撃上重要な役割を担っている。よって、このような損失が痛手であることは疑いようもない」と指摘している。

ワシントン・ポスト紙は流出文書をもとに、スペツナズ崩壊の影響は非常に大きいと述べている。スペツナズの人員を補うには、新規に採用した戦闘員の訓練を一からやり直す必要があるためだ。

高度な部隊では少なくとも4年の専門的な訓練を必要とすることから、侵攻前の状況にまで回復するには、今後10年ほどかかると流出文書は分析しているという。

短期決戦を目指したロシアは焦りが高じるあまり、特殊部隊のスペツナズを消耗の激しい前線に送り込むという失敗を犯した。この焦りこそが兵士の消耗率を高め、攻略の失敗と長期化を招いた一因にもなったようだ。

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