「性別役割分業」をアンインストールできなかった
先述した、妻の話を信じずアナザーストーリーを作り出すのも、そのひとつ。ほかにも、弁護士や裁判所の介入を嫌って「妻と直接話せばわかりあえる!」と直接の対話を要求したり(同居中、「対話」で妻をねじ伏せてきていて、妻は言いたいことを言えないままだったという認識がまったくないのでそれをまたやろうとするのです)、「愛しているんだ、悪いところは全部直すから戻ってきてほしい」と泣いたり、それでも妻の決意が変わらないと知ると「自分がここまで謝っているんだから許さないなんておかしいだろう!」と一転して怒りに転じたり……。どこかにマニュアルがあってそれを読んでいるのではないかと思ってしまうほどです。
ちなみにDVやモラハラは男性だけが加害者になるわけではなく、女性がそうなることもあります。妻から夫への、加害行為です。これはこれで許されざることなのですが、女性たちの言動には共通点が少なくパターン化しづらいと感じます。社会によって女性にすり込まれたものより、その女性の個性・気質による部分が大きいからではないかと思っています。
マニュアルはないにしても、男性が社会から同じ価値観をインプットされ、それがDVやモラハラにつながっていることは明らかです。結論から言うと、その価値観とは「性別役割分業」、すなわち「男性は外で働き、女性は家庭を守るべきである」という考え方です。
彼らも、少なくとも、最初から意図的に妻を苦しめようとして結婚したわけではないだろうと思います。主観的には「愛していた」のだと思います。しかし土台に性別役割分業の価値観があり、それをアンインストールできなかったため、関係性の構築、そして成熟が妨げられたのでしょう。
円満な関係のために手放すべきもの
現在「アンラーン(unlearn)」という考え方が注目されています。学び直しや学習棄却、学びほぐしと訳されますが、過去に学習したことからくる思考のクセや思い込みを手放す、という意味で、それをしてはじめて新たに成長する準備が整うのだそうです。
50歳を人生の節目と感じている人は多いと思います。人生後半戦をどう生きるか、誰とどのように歩んでいくかを考える、ひとつのタイミングとなるのでしょう。現在はシングルで、これから先に新たなパートナーと出会い、関係を築きたいと望んでいる人もいると思います。これまで生活を共にしてきたにしろ、出会ったばかりにしろ、円満で、安定した関係を求めているのではないでしょうか。