女性の活躍を阻止する「ガラスの天井」

であれば、最初にアンラーンすべきは、この性別役割分業の価値観です。

「そんなの過去の価値観では?」と首をひねる人もいるかもしれません。これが前時代的な価値観だと感じられるのには、現在の50歳前後の人たちが子どものころは、共働き世帯より専業主婦世帯が圧倒的に多い時代だったことも関係しているでしょう。現在は、女性が生涯仕事をもつことはあたりまえとなっています。時代は変わっていることを、身をもって感じた世代なのです。

性別役割分業は過去のもの。私も、そうであってほしいと思います。しかし残念なことに、いまでもしっかり温存されています。法律によって雇用におけるあらゆる差別が禁止されるようになりましたが、現実には女性の管理職の割合はほかの先進諸国と比べるとワーストレベルに少ないです。

女性は出産や育児でキャリアが中断してしまうだけでなく、性別を理由に素質や実績が十分でも不当に昇進を阻まれてしまう現象があり、これを「ガラスの天井」と言います。国会中継を見ると年輩の男性議員ばかりなのに対し、新型コロナウイルスの蔓延で注目されたエッセンシャルワーカーは圧倒的に女性が多いというのも、「性別によって役割が違う」という考えからきています。

男女間の賃金格差の概念
写真=iStock.com/Andres Victorero
※写真はイメージです

ふたりの息子に押し付けられた「男らしさ」

社会のなかに“あたりまえ”のようにある価値観、空気のように漂っている価値観に、人は疑問を持ちにくいもので、そうとは知らないまま吸収します。私がそのことに危機感を覚えた大きなきっかけは、息子ふたりの子育てです。

男の子の育児には、こんなにも幼いころから社会から「男らしさ」を押し付けられるのかと驚くことがたくさんありました。私自身は三姉妹の長女として育ったので、「男らしさ」の押しつけに気づきにくかったのですが、私は私で「女らしさ」のイメージをすり込まれ、それに苦しんできたところはたくさんあります。

息子たちは、私とは違う角度からこの問題にぶつかることになるだろうと、息子たちの幼少期から感じていました。幼いうちに身につけさせられたこの価値観は、社会に出るとさらに強化され、成長してからの人間関係に影響を与えるのではないか。そのなかにDVやモラハラにつながる要素があるのではないか。そんなことを考えながら書き下ろしたのが、『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(大月書店、2020年)です。