JリーグとNPBの運営の最大の違い
野球ファンならよく知っているように、NPBの試合も「DAZN」で放映されている。しかしJリーグと異なり、NPBの場合、契約しているのは個別の球団だ。
「DAZN」はJリーグ同様、NPBとも一括契約を目指したが、特にセ・リーグの足並みが乱れた。
親会社がメディア企業の巨人、中日、そして地元放送局と関係が深い広島、阪神が当初、難色を示した。紆余曲折を経て今では広島を除く11球団の主催全試合が視聴可能だが、JリーグのようにJ1、J2、J3リーグの全試合パッケージにはなっていない。
DAZNサイドとしてはJリーグのようにプロ野球で「いつでもどこでも好きなチームの試合を応援できます」と言えないのは商品的に大きな問題があるのだ。
またNPBの場合「DAZN」の放映権料は球団に入っている。球団は自分たちの経営の原資にはするが、球界全体のことを考えたりはしない。このあたりがJリーグとNPBの運営の最大の違いだと言えよう。
メジャーリーグとJリーグの共通点
実は、こうした契約形態の違いは、さらに大きな格差にもつながっている。個別の球団、クラブが放送メディアやスポンサーと契約する場合、契約は短期間で少額になる傾向がある。球団やクラブは単体では「中小企業」であり、テレビ局や大企業との力関係では弱くなる。また、供与できるサービスやコンテンツも限定的だ。
しかしJリーグ全体やNPB機構となると事業規模も大きくなるし、提供できるサービス、コンテンツもはるかに大きくなる。だから契約も長期間で大型になるのだ。一事で言えば「スケールメリット」があると言えよう。
アメリカのMLBでは、全国規模の放映権料や、ライセンス契約など30球団がまとまったほうがいいビッグビジネスは、MLB機構が包括的な契約をメディアや企業と結んでいる。コロナ禍でもMLBはApple TV+と年間8500万ドル(約99億円)の新たな放映権契約を結んでいる。当時で、配信契約からの収入は、年間19億5500万ドル(約2268億円)だ。
その一方で球団は入場料収入や物販などローカルビジネスに徹している。
この分業が確立しているから、MLB機構は巨大な経済力を背景にエクスパンション(拡張)を行ったり、経営不振に陥った球団を救済したり、海外のプロリーグに出資して国際戦略を展開するなど、MLB全体の繁栄のために大きな力を振るうことができる。今回のWBCもMLB機構とMLB選手会が共同出資した企業が主催者だった。
しかしNPB機構は、財力がないために機構が主導して将来構想を描くことができない。