Jリーグの経常収益はプロ野球の6倍

本来であれば、NPBもJリーグと同様、地域に向けて普及活動をすべき時ではある。

しかしNPBは小中学校向けの「ベースボール型授業の普及活動」などは行っているが、本拠地球場以外のエリアへ向けた特別なキャンペーンは行っていない。そもそもそれをするだけの「原資」がないのだ。

NPBの2021年度(2022年9月30日決算)の「正味財産増減計算書」によると、NPBの経常収益は53.8億円。主たる収益は日本シリーズ、オールスター戦、さらに侍ジャパン関係などの事業収益と、NPB12球団から入る年会費(1球団年間1000万円)だ。(NPB公式サイトより)

売り上げ50億円余りは150億~300億円とされるNPB球団単体よりもはるかに少ない。

これに対し、Jリーグの2022年度(2022年12月31日決算)の「正味財産増減計算書」を見ると、Jリーグの経常収益はNPBの約6倍の320.3億円。

「KICK OFF!」を作った原資

収益で目立つのは公衆送信権料収益の194億円だ。これは一般には「放映権料」と呼ばれる。このほぼすべてがスポーツ専門のビデオ・オン・デマンド・サービス「DAZN」からのものだ。

2016年7月、Jリーグは「DAZN」と2017年から10年間で約2100億円の放映権契約を締結。その後、新型コロナウイルス感染症の拡大による試合の一時中断を受け、2017年~2028年で約2239億円の放映権契約に見直しを行った。さらに、今年3月にも、契約を一部見直し、2023年から2033年までの11年間で約2,395億円という契約を締結した。

194億円の放映権料は、ほぼ「DAZN」からの分割払いなのだ。

Jリーグはこの収益などを原資として、Jクラブチームに対して総額152億7300万円もの配分金を配っている。また「KICK OFF!」の制作、放映など普及活動も展開している。

コロナ禍で試合開催もままならない中、経済基盤が弱いJ3クラブは困窮した。Jリーグからの配分金で命脈を保ったクラブもあったと聞く。

それだけではない。Jリーグは日本サッカー協会(JFA)と連携して「JFA/Jリーグ協働事業(JFA/J.League Cooperative Development Programme)」という次世代選手育成事業も行っている。

筆者はたまたま2016年8月の終わりに東京都立大学の理事長室で、Jリーグ生みの親の川淵三郎氏にインタビューした。

川淵氏はJリーグが「DAZN」と契約したことに触れて「彼らは本当によくやったね。日本サッカー界はこれからいろんなことができる」と言った。