2020年10月から、Jリーグの企画・監修によるサッカー番組が全国30局のテレビ局で始まった。スポーツライターの広尾晃さんは「Jリーグは動画配信のDAZNから得た巨額の放映権料の一部をこうしたサッカー普及活動に使っている。プロ野球はJリーグの仕組みを学び、球界の将来を考えた行動をすべきだ」という――。

民放30局が始めた「KICK OFF!」という番組の正体

2022年10月から「KICK OFF!」という地上波テレビ番組が始まったのをご存じだろうか?

Jリーグ(公益社団法人 日本プロサッカーリーグ)が企画、監修を行い、クラブチームがある各地方の民放テレビ局が放送している。

各クラブチームを応援するこの番組は、Jリーグが「リーグ30周年」記念事業として全国の民放30局と提携して始めたものだ。その背景にはサッカー界が抱えるある問題がある。

サッカー離れへの危機感

1993年にスタートしたJリーグは、サッカーを野球に次ぐ日本の「ナショナルパスタイム」に押し上げた。特に2002年の「日韓共催ワールドカップ」以降、サッカー人気は急拡大した。

笹川スポーツ財団の調査によればサッカー人口(男女、実施人口・愛好者人口)は2000年には219万人だったが、コロナ直前の2018年には436万人とほぼ倍増している。

しかし、青少年に限ると、サッカー競技人口は伸び悩んでいる。

JFA(日本サッカー協会)の調査によれば、第3種(中学生相当)の競技人口は、2000年には20万4223人だったが2010年には23万8713人と増加したものの、2021年には21万1356人と減少傾向にある。

これは近年の少子化に加え、スポーツの選択肢が増えたことが大きい。さらにコロナ禍で中学生世代のスポーツ活動が制約を受けたことも要因だ。

1993年に1リーグ10クラブで始まったJリーグは、2023年にはJ1からJ3まで3リーグ60クラブになっている。

これは1996年に発表された「Jリーグ百年構想」の「あなたの町に、緑の芝生におおわれた広場やスポーツ施設をつくること」に基づくエクスパンション(拡張)ではあったが、地方のJ3クラブは経済基盤も小さく、経営も厳しい。

Jリーグはこの状況下、主として地方にあるJ2、J3クラブを支援するためにローカル局と提携して「KICK OFF!」という番組を立ち上げたのだ。

「KICK OFF!FUKUOKA」公式ウェブサイトより
「KICK OFF!FUKUOKA」公式ウェブサイトより