静岡県に手を出せない政府もだらしない

元首相秘書官の飯島勲氏は、『プレジデント』(2022年3月18日号)の連載「リーダーの掟」で「名案求む! リニア開通で未来へ進むために」と題して、静岡県のリニア問題を取り上げている。

飯島氏は、国の有識者会議で大井川水系の水資源に影響がないと結論が出されたのに、川勝知事が「納得できない」と繰り返すだけで、着工すべきでない理由を明確にしていない状態に憤慨している。

「大井川水系の水資源に影響がない」ことは、拙著『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太静岡県知事「命の水」の嘘』(飛鳥新社)で詳しく紹介した。現在の議論は不毛と言うほかなく、単に川勝知事の嫌がらせでしかない。それがわかっていて、静岡県を指導できない政府が「だらしない」のひと言に尽きる。

リニア計画は「日本の未来を背負った重要な問題」ではないのか

飯島氏は「知事の権限が強くて計画が進まないなら、法律を改正して国の決定事項として早期着工が可能になっていい」と提案した上で、「早急に政治の重要課題として国会で議論を始めるべきだろう」と政府の決断を促していた。

リニア計画推進の大きな理由を「リニア中央新幹線は日本経済を成長させる原動力」「単純な『自治体VS企業』の問題ではなく、この国の未来を背負った重要な問題」としていた。

「この国にかかわるすべての人がアイデアを出し合い、『工事を進めるために何ができるか』を考える必要がある」と読者の名案まで求めた。

筆者も、静岡県で不毛な議論をだらだらと続けるよりも、政治的な打開策を打つほうが、ずっと現実的な解決方法であると思う。

しかし、飯島氏の提言から1年以上が経過したが、これまで政府には何ら動きは見られない。いくら飯島氏が切歯扼腕せっしやくわんしても、政府や志の高い政治家は誰も動かなかったのだろう。

となると、政府にとって、「リニアは日本経済を成長させる原動力」「この国の未来を背負った重要な問題」ではないのかもしれない。