他の人なら、皮肉を言われたと落ち込むところですが、Kさんは言葉通り“自分は何かいいことをしたんだ”と受け取り、「本当ですか? 良かったです」と返したのです。相手はすっかり機嫌を悪くしてしまったのですが、その理由がKさんにはわかりません。

イラスト=『発達障害の人が見ている世界』より

普通なら相手の表情や声のトーンなどから「これは本当の意味ではないな」と察するところを、そのまま受け取ってしまうKさん。人の気持ちを想像するのが苦手なため、言葉の意味と本当の気持ちが異なる言い回しは、真意を理解しづらいのです。

そのため、社交辞令やリップサービスを真に受けたりすることもありますし、会話を切り上げたいときに無言で時計を見たりする“暗黙のルール”などもわかりません。

言葉の裏を読むことができない

特性の程度によりますが、本人は、人の言葉の裏が読めていないと自覚していないことがあります。「それは普通、こういう意味でしょ」と説明しても、そもそも“普通”がどういうものか、わかっていないこともすくなくありません。

ですから、ですから、発達障害の人に対しては、言いたいことや伝えたいことは、意味通りの言葉でストレートに伝えることが大切。もし、イラッとしてしまうようなら、発達障害の人は一般の人とは感覚が違う、ということを意識してみてください。

イラスト=『発達障害の人が見ている世界』より

たとえば、日本では「粗茶ですがどうぞ」と言ったりしますが、文化的な背景が異なる外国の方には、自然とそうした表現を控えるのではないでしょうか。このように、“違う文化の人なんだ”と考えて接するのも、発達障害の人と付き合うひとつの手です。

<ポイント>
“普通はわかる”は通用しない! ストレートに、意味通りの言葉で伝えよう
・皮肉や嫌味、社交辞令は伝わらない
・本人も自覚していないことが多い
➡一般の人とは感覚が違うことを理解しよう

<自分かも!? と思ったあなたへ 生き方のヒント>

あえて逆を言うのは人間関係の知恵です。Kさんが先輩から言われた皮肉のように、遠回しな表現で気づきを促したり、本心ではないお世辞や社交辞令を言ったりすることで、私たちは人間関係を維持しています。それは生きるための知恵だと理解しましょう。

でもあまりに苦しければ、「できるだけストレートに言って」と周囲の人に頼んでみてください。環境が許せば「自分は発達障害の傾向があるかもしれないから」と添えてもよいでしょう。