価値のない仮想通貨に価格を付けて上場させる

そこでバンクマン=フリード氏が何をしたのかというと、ほとんど実質上価値のない仮想通貨に価格を付けて上場させる仕組みをつくったのだ。

未上場の会社を上場させる仕事は証券会社にとっても、業務のけっこう大きな部分を占める。アンダーライティングといわれるもので、証券会社が当該企業から売り出すことを目的にいったん株式を引き受けたり、売り出したりするのである。

FTXもさまざまなコイン(暗号資産)をつくっては上場させた。その代表が自社コイン、FTXトークン(電子証票)の発行であった。この仕組みを説明しよう。

写真=iStock.com/JHVEPhoto
価値のない仮想通貨に価格を付けて上場させる仕組みをつくった(※写真はイメージです)

①FTXがFTXトークンをつくる

これは何も入っていない、いわば“空箱”だ。ほぼすべての暗号資産は空箱にすぎない。内容はプロトコールと呼ばれるただのプログラムである。

FTXはこれを最初につくった会社であるアラメダリサーチに送った。アラメダリサーチはのちにマーケットメーカー会社へと発展していったのでコインを一旦受けた。

②アラメダリサーチが価格を付けてFTXに渡す

マーケットメーカーとは、まだ価格が決まっていないものに価格を付ける、価格を提供するところだ。マーケットメーカーであるアラメダリサーチがFTXと取引をして、FTXトークンを買う。そこでマーケットメーキング、つまり価格付けを行う。仲間内でそれを広げていき、FTXに返す。

③FTXトークンをFTX(自社取引所)に上場させ、個人投資家に販売する

こんなに高い価格が付いているし、しかもどんどん上昇中なので、「是非上場させよう。一般投資家もこれに乗らない手はない」という話になり、自社取引所に上場させた。

④個人投資家は無価値のトークンを、FTXは現金を獲得する

このときになって初めてこのスキームに対し、外部から本当のお金が入ってきた。

こうして日本円、米ドル、ユーロなどの法定通貨での取引が始まった。