他の人と間接的に肌が触れ合う洋式は「汚い」

ところが、ある日そのトイレに並んでいる若い人たちを注意深く見てみると、彼らは洋式を避けて、和式が空くのをじっと待っている! 他の人と間接的に肌が触れ合う洋式は「汚い」から入りたくないということらしい。ドアもついているし、下水も詰まっていないトイレでも満足できない、というのが近頃の中国の若者の感覚らしい。

この10年でこういう若い人に出会う機会が増えた。そういう人のためにモールのトイレ内には、洋式便座用の使い捨てのカバーや使用前に便座を拭くための消毒液のディスペンサーが取り付けてある。

そういえば、60歳になる北京の人民大会堂のすぐ近くの下町の胡同に住む知人が潔癖症の娘を嘆いていたことを思い出した。彼女の家は北京でも数少ない歴史のある胡同の一つで8家族が雑居している伝統住宅の四合院だ。

中庭には大きな香椿の樹があり、へちまや胡瓜が育ち、愛犬や鶏が自由に歩き回っている。北京の真ん中とは思えない牧歌的なお庭のある平屋住まいは最高に素敵な環境なのだが、旧式の家屋は下水道が未発達で、トイレだけは通りに出ていき、公衆トイレを使う。

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潔癖症が中国の若者の間で増えている

このように北京の中でも最も庶民的な環境で育った娘さんなのだが、知人は「娘はやけに潔癖症でバスのつり革を握るのも嫌がるし、洋服もすぐにドライクリーニングに出したがる。今の若者ときたら私たちとは随分違うのよね」と嘆いていたのを思い出した。知人は大抵のことは「大丈夫、大丈夫」とやりのける明るく大らかな北京っ子らしい人だ。

約30歳弱の年の差がある彼女の一人娘がそんなに潔癖症と聞いて、知人のイメージとかけ離れているので驚いたものだった。しかし、モールの洋式トイレも敬遠する人が多い今の北京では、この知人の娘さんのような人はちっとも珍しくないのかもしれない。若者はとってもキレイ好きなのだ!

潔癖症が若者の間で増えていることについては洗濯の別洗いや洋式トイレの使用回避などについて触れたが、潔癖症の対象は最近はモノだけではない。中国には近年、「精神潔癖症」という新しいことばも登場している。