デンマーク首都の98%に熱電併給が整備
やがて、自国領の北海で原油・天然ガスが発見、開発され、デンマークのエネルギー自給率は改善されることになった。同時に、CHP(熱電併給)の増設を通じて熱利用も拡大した。1980年代半ばには、原子力発電所を将来にわたって建設しないことを決めた。90年代半ばごろから風力発電が急伸し、2010年代には太陽光の普及が進んだ。
また、デンマークは、周辺諸国との送電連系の構築にも力を入れた。その結果、2018年の電源構成は、風力41%、太陽光3%、バイオマス・廃棄物18%、化石燃料23%、輸入15%となった。
また、デンマークの全世帯における熱源の構成比は地域熱供給(DH)が63%、天然ガスが15%、石油が11%、電気等その他が11%であり、コペンハーゲンではじつに98%の世帯にDHの導管がつながっている。火力発電設備のうちの66%がCHPであり、その燃料は59%がバイオマス中心の再生エネ、24%が天然ガス、15%が石炭、その他が2%であるのだ(数値はいずれも2017年実績値)。
「化石燃料から熱を供給する」はやめられる
全国各地に展開するDHの事業主体は自治体が主宰する第3セクターで、非営利事業として営まれている。多くはタンク式やプール式などの温水貯蔵施設を擁しており、その中には、昼夜間調整だけでなく季節間調整(夏期に貯めた温水を冬季に使う)が可能なものもある。
このようにセクターカップリングないしパワー・トゥー・ヒートという考えに立ち、DHを普及させれば、熱供給を化石燃料(天然ガスや石炭)の呪縛から解き放つことができる。「日本のガス料金は国際的な天然ガス価格次第」という、従属変数的な窮地から脱出することが可能になるのである。
とはいえ、デンマーク式のセクターカップリングをすぐに日本に適用することは難しい。デンマークで普及している温水導管が、日本ではほとんど存在しないからである。