同時にやるから、全部できる
人生にはさまざまな、選択を迫られる場面があります。
女性は、結婚か仕事か、キャリアか子育てかなどで悩む場合が多いと思いますし、男性も、仕事をしつつ大学や大学院に戻ってもう一度勉強したい、などと考える人もいるでしょう。
男女問わず、現実の仕事に向き合うか、それとも子どもの頃からの夢を追いかけるかで悩む人もいると思います。実際、私も講演先の大学で学生の方に「キャリアプランと人生プランはどのように考えるべきか」といった質問を受けることがあります。
「AかBか」「CかDか」どちらをとるかで悩んでいる人がいたとき、私が迷わずいうのは「『or』ではなく『and』でいける道はないかを考えましょうよ!」ということ。
どちらか一方だけを先に実現させる方法を考えるのではなく、どちらも同時に実現させる方法を考えるのです。
複数のやりたいことを同時に実現させるのは一見大変そうに思えるかもしれませんが、案外、ひとつひとつ単独で実行するよりも、一緒にやるからこそできることも少なくありません。
留学準備も、勤務先を辞めて、あるいは休んでから始めるというのではなく、あくまでも日中の仕事と同時並行で。臨床の現場にいつつ、留学準備をすることで、患者さんの治療にあたりながら、自分がどうして留学したいのか、という目的意識を見失うことなく、高いモチベーションを保つことができました。
複数の世界を持ち「やりたいこと」で自分を解放できるか
人によっては、子育て中は育児休暇をとって、子育てに専念して、という場合もあると思います。もちろんそれもとても素敵ですが、私は「夕方6時半までには必ず保育園に子どもを迎えに行かなければならない」という制約があるからこそ、仕事への集中力が増しました。
そして、子育てのイライラは仕事に打ち込むことで解消し、仕事でのストレスは、子どもの顔を見て吹き飛ぶ、という具合に、私は子育てと仕事を行き来していることで、助けられてきたのです。
同時にやるからこそ両方できることというのは、意外と少なくないのです。
趣味のスポーツや習い事に精を出しながら自分を鍛え、充実した毎日を過ごしているビジネスパーソンも少なくありません。
また、ある程度キャリアを築いてから妊娠・出産をと考える女性は少なくありませんが、産婦人科医として多くの患者さんの治療にあたるなかで、仕事に没頭しているうちに妊娠適齢期を過ぎてしまい妊娠しづらくなった、というケースをこれまでたくさん見てきました。
この場合も、キャリアと妊娠・出産を同時に手に入れる方法を考えたほうが、両方を得られる確率は高まるように思います。
もし「or」で悩むときがあったら、「and」はできないかと考えてみる。
どちらか一方ではなく、両方とも手に入れる方法はないかと考えてみる。
さらには、何かふたつのことの両立をがんばっているときに、あえてさらに「やりたいこと」に取り組んでみる。
仕事と家庭、このふたつのタスクに押しつぶされそうになっているときこそ、資格検定や語学、スポーツの楽しさや充実感に救われることがあります。
「やらなくてはならないこと」があるからこそ、「やりたいこと」で自分を解放する。
「やりたいこと」に打ち込んでいるからこそ、「やらなくてはいけないこと」の大変さがちっぽけなものに思える。それぞれが、互いを刺激し合い、モチベーションがふくらんでいく。
そのためにはいろんな世界をもっているほうが、そこに広がりが生まれ、自分がラクになるきっかけが増えると思うのです。