もちろん高額商品でも、市場のニーズと合っていればいい。しかし、企業は往々にしてシーズから企画開発を行い、需要喚起しようとして失敗する。アップルの「iPad」や「iPod」のような成功例もあるが、一般企業にとって、あれほどのイノベーションは狙ってできるものではない。仮に高額商品の企画開発が必須だとしても、自社のシーズと市場のニーズの棚卸しを行い、両社のANDを取っていく戦略が必要だ。

いずれにせよ、ほかにも中論点があるなら高額商品の企画開発に縛られる必要はない。指示された論点を鵜呑みにして足踏みするより、もっと筋のいい論点に取り組み、「利益率の改善」という大論点を解決したほうが、会社にも有益なはずだ。

ただ、このとき注意すべき点が2つある。論点は人や立場によって違うことだ。「高額商品の企画開発」という論点があったとき、その上位概念である大論点は「利益率の改善」かもしれないし、「ブランド力の向上」の可能性もある。それを自分で勝手に判断すると、誤った大論点を解くこともありうる。上司に真意を確認するとしても、直属の上司とさらにその上の上司で論点が異なる場合がある。コンサルティングの現場でも、経営の上流にインタビューしてようやく本意がわかったというケースは少なくなかった。

そもそもビジネスは、人が抱えた問題を解決することに本質がある。自分の問題をいくら解決しても報酬は発生しない。社内の課題も、その延長線上にある。自分に課せられた問題は、いったい誰にとっての論点なのか。大論点を明確にするためには、まずその見極めが肝心だ。

論点を整理するイシューツリーは虫食いでもかまわない。論点を見極めようとすると、おそらく最初は複数の論点が、大論点なのか中論点なのか、あるいはより具体的な小論なのか判然としないまま、バラバラに浮かび上がってくるはずだ。それらを整理して全体像をつかむために構造化するわけだが、問題がごく単純な場合を除き、最初からきれいなツリーになることはほとんどない。そこでツリーの完成にいつまでもこだわっていると、問題解決が遅くなる。構造化の目的は、全体像から自分が取り組むべき論点を導くことである。完璧なツリーにこだわるより、先に進むべきだ。

(構成=村上 敬)
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