アカデミア出身の総裁は世界の常識

次期日銀総裁に植田和男氏が起用される見通しだ。日銀総裁は長らく日本銀行や財務省(旧大蔵省)出身者が務めてきた。もし実現すれば、戦後では初めて経済学者出身の総裁が金融政策の舵取りを担うことになる。

2月24日、植田和男氏に対する所信聴取と質疑が衆議院議院運営委員会で行われた。(時事=写真)

世界に目を転じれば、FRB(米連邦準備制度理事会)で議長を務めたベン・バーナンキやジャネット・イエレン、ECB(欧州中央銀行)前総裁のマリオ・ドラギもアカデミア出身だ。バーナンキとドラギはマサチューセッツ工科大学(MIT)大学院で博士号を取得しており、植田氏と同じである。植田氏の総裁就任は世界の潮流に沿ったものである。

私が東京大学経済学部で助教授をしていた1974年に、植田氏が理学部数学科から経済学部へ学士入学してきた。当時の経済学部には数理経済学の宇沢弘文教授がおり、「宇沢先生のお弟子さん」として知り合ったと記憶している。

そのとき、外貨準備の決定要因に関する研究をしていて、確率の定常過程を調べる必要があった。そこで数学科出身の植田氏に聞いたところ、短時間にすっきりと解いてくれたのに感心した。同論文は彼との共著で英国を代表する学術誌に掲載された。